■ 冬空に飛行機切り絵の如く消ゆ
( ふゆぞらに ひこうききりえの ごとくきゆ )
先日は、朝から雲一つない澄み切った青空が見えていた。散歩をしながら、ふと上空を見上げると、東から西に向かって横切るように動いているものが見えた。飛行機である。飛行機は、航行する空が十分湿っていて、温度が低ければ飛行機雲を後部から引いて飛ぶ。しかし、乾いていると飛行機雲は発生せず、飛んでいることに気がつかない場合が多い。
飛行機雲を引かない飛行機は、まるで白い紙で作った切り絵のように薄っぺらく見える。それが、青空をバックに滑るように動いている。あの紙切れのようなものに何百人もの人が乗っているとは今も信じがたいが、これが文明なのだろう。
掲句は、そんな光景を見ながら作った句である。実のところ、比喩として使った「切り絵」という言葉を得るには少し時間がかかった。
ところで、比喩に関しては、数日前のブログに分類や意義について少し書いた。今回は、「ごとし、ような」などを使う直喩(ちょくゆ)に絞って、いくつか事例を探してみた。
以上、自分なりに八句選んで掲載したが、いずれも陳腐でなく、意外性があり、しかも分かりやすい。ただ、名のある俳人の句でも、比喩が奇抜すぎて理解不能のものもまま見られた。こういう句に出会うと、読み手の力不足が問題なのか、作り手の独善なのかが分からなくなる。
作句において比喩を使うことも多いが、あまり気張らずに、多少の工夫と分かりやすさの追求が、まずは肝要と改めて思った次第である。 ![イメージ 2]()
掲句は、そんな光景を見ながら作った句である。実のところ、比喩として使った「切り絵」という言葉を得るには少し時間がかかった。
最初、「おもちゃ」としたが、些か陳腐な感じがする。白く薄いものということで、「雪片(せっぺん)」が浮かんだが形のイメージが合わない。更に、「鳥」「綿虫」「かけら」「塵」などいくつも候補を検討し、漸くたどり着いたのが「切り絵」である。
ところで、比喩に関しては、数日前のブログに分類や意義について少し書いた。今回は、「ごとし、ような」などを使う直喩(ちょくゆ)に絞って、いくつか事例を探してみた。
【直喩の俳句事例】
夏山の洗うたやうな日の出哉 (小林一茶)
去年今年貫く棒の如きもの (高浜虚子)
火を投げし如くに雲や朴の花 (野見山朱鳥)
炎天を槍のごとくに涼気すぐ (飯田蛇笏)
蛍火や疾風のごとき母の脈 (石田波郷)
一枚の餅のごとくに雪残る (川端茅舎)
葡萄食ふ一語一語の如くにて (中村草田男)
家にゐて旅のごとしや秋の暮 (長谷川櫂)
夏山の洗うたやうな日の出哉 (小林一茶)
去年今年貫く棒の如きもの (高浜虚子)
火を投げし如くに雲や朴の花 (野見山朱鳥)
炎天を槍のごとくに涼気すぐ (飯田蛇笏)
蛍火や疾風のごとき母の脈 (石田波郷)
一枚の餅のごとくに雪残る (川端茅舎)
葡萄食ふ一語一語の如くにて (中村草田男)
家にゐて旅のごとしや秋の暮 (長谷川櫂)
以上、自分なりに八句選んで掲載したが、いずれも陳腐でなく、意外性があり、しかも分かりやすい。ただ、名のある俳人の句でも、比喩が奇抜すぎて理解不能のものもまま見られた。こういう句に出会うと、読み手の力不足が問題なのか、作り手の独善なのかが分からなくなる。
作句において比喩を使うことも多いが、あまり気張らずに、多少の工夫と分かりやすさの追求が、まずは肝要と改めて思った次第である。