■ 欲張りな お多福南天冬紅葉
( よくばりな おたふくなんてん ふゆもみじ )
南天(なんてん)の赤い実が、今方々で鈴なりになっている。この植物は、その名が「難を転ずる」に通じ、縁起の良い木とされているが、その仲間に「お多福南天(おたふくなんてん)」があるのを昨年知った。樹高が低く、実もならないのであまり目立たないが、秋から冬にかけて紅葉し、しかも落葉しないので、グランドカバーや生垣としてよく植えられている。
上五で「欲張りな」といっているが、欲張りなのは名前をつけた人間であって、当の「お多福南天」には何の咎(とが)もない。尚、「南天の実」は冬の季語だが、「お多福南天」は実がならず、季語にもなっていないので、掲句では冬紅葉を季語とした。
ところで、この「お多福南天」、江戸時代に「南天ブーム」があり、紅葉を楽しむために品種改良したものだそうだ。「お多福」という名前は、何のことはない、葉が丸くふっくらしていることから付けられたとのこと。
話は変わるが、「南天」や「お多福」のように、駄洒落、語呂合わせなどで縁起物になったものは結構多い。例えば、以下のものが挙げられる。
【鯛】 目出度い=めでたい 【昆布】 喜ぶ=よろこんぶ、子生婦=こうぶ
【橙】 子孫が代々(だいだい)繁栄する 【黒豆】 まめ(勤勉)に働き、まめ(健康)に暮らす
【狸】 他(た)を抜く=商売繁盛 【数の子】 子孫繁栄 など
【狸】 他(た)を抜く=商売繁盛 【数の子】 子孫繁栄 など
最近では、受験用として以下のものがあるそうだ。
【キットカット】 きっと勝つと 【ポッキー】 ポッキーでキッポー(吉報)
【オクトパス】 置くとパスで蛸の置物
他にも挙げればきりがないが、こんなものを信じてどうすると思う反面、こんなものを信じる?日本人の大らかさ、大まかさをしみじみと感じる今日この頃である。