■ 紫の雪に粧うや比叡山
( むらさきの ゆきによそうや ひえいざん )
昨日は冬至の日。朝は晴れ間が見えていたので、久しぶりに宝ヶ池公園へ行ってきた。この公園は、江戸時代に作られた農業用の溜め池を中心に自然公園として整備されたものだそうだ。池は非常に大きく周囲が約1.5kmもある。また、隣接して国立京都国際会館がある。
比叡山は、大津市と京都市にまたがる山(標高848m)で、高野山と並び古くより信仰対象の山とされ、延暦寺や日吉大社などの古刹がある。松尾芭蕉はじめ多くの俳人が句に詠んでおり、俳枕の一つにもなっている。
俳枕とは、俳句に詠まれた名所・旧跡のことで、似た言葉に歌枕がある。これは、和歌の題材とされた日本の名所旧跡のこと。重なるものも少なくないが、その違いについて、俳人で国文学者の尾形仂氏が述べていることを要約すると、以下のようになる。
歌枕はあくまでも文学上の地誌である。その中には、言葉のひびきのよさのみによる
架空の地名も含まれる。たいせつなのは、それに伴う文学的イメージであって、その
所在や実景は問うところではない。それに対して俳枕は、自ら草鞋に足を痛めた実証
検証の上に立つ文学地誌である。
現在、歳時記とともに、俳枕の編纂も進んでいるようだが、名所旧跡へ行く場合、あるいは句を詠む場合など、どんな句が詠まれているか、一度当たってみるのも良いかも知れない。
今回は、比叡山(叡山、比叡)の参考句を「新撰俳枕」(朝日新聞社)からいくつか抽出し掲載した。
海は晴れて比叡降り残す五月哉 (松尾芭蕉)
きのふけふ比叡に片よる時雨かな (高浜虚子)
叡山に燈がつきにけり床涼み (青木月斗)
冬構急ぐともなし比叡の晴れ (日野草城)
老鶯や比叡は雲をかさねつつ (桂信子)