Quantcast
Channel: 写真・俳句ブログ:犬の散歩道
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1553

ビロードのマントまといて枇杷の花

$
0
0
■ ビロードのマントまといて枇杷の花
                         ( びろーどの まんとまといて びわのはな )
 
枇杷の花が咲きだした。花は実と同じように固まって咲くが、白の地味な花であまり目立たない.。蕾は茶色の萼(がく)に被われ、花が開くとまるでビロードのマントでも纏っているように見える。掲句はそんな枇杷の花を詠んだものである。

イメージ 1《ビロードは、ベルベット、天鵞絨(てんがじゅう)とも呼ばれる織物の一種で、柔らかで上品な手触りと深い光沢感を持つ。マントは、袖のない外套の一種で、防寒用あるいは権威の象徴として使われた。》

ところで、掲句では、花の萼をビロードのマントに喩えたが、周知のとおりこれを「比喩」という。俳句でもよく使われる表現方法なので、確認の意味で、ここに少し整理してみた。
まず、比喩は大きく以下の二つに分けられる。

【直喩】:「~ごとく・ごとし、~ようだ」というように物を何かに喩えて表現する。
【暗(隠)喩】:「何々は何々である」という風に対象を他のものとして表現する。

直喩では、「ごとし」などを入れるので何かに喩えていることが分かるが、暗喩では、暗に示すだけなのでわからない場合がある。

掲句の「ビロードのマント」は、上記分類でいけば暗喩になるが、枇杷の萼の喩えであることが分からないと、誰がマントを着ているの?枇杷の花がマントを着るなんて、何を馬鹿なことを言っているのだということになってしまう。

また、比喩が、非常に常識的なものであれば、句全体が非常に陳腐で平凡なものになる。逆に意外性、奇抜性を求めすぎると的外れの句、独善の句になる。その加減が実のところ非常に難しい。果たして掲句の比喩はどうなのか。いささか心もとない感じではある。
 
    【枇杷の花の参考句】
     枇杷の花鳥もすさめず日くれたり      (与謝蕪村)
     枇杷の花咲くや揚屋の蔵の前         (炭太祇)
     枇杷咲いてこそりともせぬ一日かな    (村上鬼城)
     忘れゐし花よ真白き枇杷五瓣      (橋本多佳子)
     枇杷咲いて長き留守なる館かな        (松本たかし)
 
イメージ 2

Viewing all articles
Browse latest Browse all 1553

Trending Articles