■ アメリカは遠くて近き花水木
( あめりかは とおくてちかき はなみずき )
花水木の日本の植栽は、ご承知の方も多いと思うが、1912年に当時の東京市長が、アメリカワシントンD.C.へ桜(そめいよしの)を贈り、その返礼として1915年に贈られてきたのが始まりだそうだ。
そのことを知り、かつて以下の句を詠んでいる。
生国はアメリカらしく花水木
花水木には、白や薄紅(ピンク)の花があるが、殊に薄紅の花は、アメリカらしく明るく朗らかな感じを漂わせている。
本日の掲句は、そのアメリカ産の花水木を、今日のアメリカと日本との関係にかけて詠んだ句である。「花水木」は春の季語。
アメリカとは地理的には非常に遠いが、親しさからいうと非常に近い関係にある。ただ、昨今のアメリカの状況には非常に危ういものがあり、距離感をどう保つかが極めて難しくなってきているように思う。
もっとも、それはアメリカだけとの関係に限ったものではなく、東アジア、ヨーロッパなどとの関係でも同じことが言える。世界の何かが、今大きく変動しつつある。
話は戻って、花水木に関しては、他に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 薄紅が波立つ如く花水木
② 碧落に紅き漣花水木
③ あまた蝶舞うが如きに花水木
①は、波立つように咲き誇っている薄紅色の花水木を見て詠んだ句。
②は、①を改良したもので、バックに碧落(へきらく)=青い空を入れ、波立つ様子を漣(さざなみ)に喩えて表現した。
③は、花を沢山の蝶の乱舞に喩えた。
花水木は、ミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属の落葉高木で北アメリカ原産。花期は4月下旬から5月上旬で、葉に先だって白や薄紅(ピンク)の花をつける。但し、花弁のように見えるのは花を包んでいる総苞(そうほう)と言われるもので、中心の塊が花(序)だそうだ。
名前は、ミズキの仲間であり、花が非常に目立つことに由来する。別名に「アメリカヤマボウシ」があるが、これは日本の近縁種の山法師(やまぼうし)に似ていることからつけられたとのこと。
「花水木」を詠んだ句はままあり、これまでも何句か紹介したことがあるが、以下にはそれ以外のものを掲載した。
【花水木の参考句】
花水木おぼれぬようにさきにけり (阿部完市)
花水木甍と応ふ甃 (宮坂静生) *甃(しきがわら)
花水木待たるることのある如し (西村和子)
花水木風そよがせて日を招く (土方豊子)
曇天にささやきそめし花水木 (中本森八)