■ 二股は悪しされど三椏は美し
( ふたまたはあし されど みつまたはうまし )
この三椏で一句と思い、ここ数日考えていたが、なかなかいい句が思い浮かばない。結局、掲句のような戯れ句となった。
「人間関係、殊に男女関係において二股を掛けるのは良くないと言われるが、植物の三椏は、それとは全く関係なく美しい。」というのが句意である。「三椏の花」は春の季語。
ところで、下五の「美し」をどう読むか。当初は「はし」と読むことにしていたが、この読みは和歌でいくつか用例があるものの辞書には出てこない。
他にどんな読み方があるかというと、「うつくし」「うるわし」「うまし」「いつくし」「いし」などがあげられる。
この内、「いつくし」「いし」はあまり聞き慣れないので除外し、先の3つについて意味を確認した。
【うつくし】 …色・形・音などの調和がとれていて快く感じられるさま。愛らしい。
【うるわし】 …精神的に豊かで気高い、端正で美しい。現在は麗しいと書く。
【うまし】 …満ち足りていて美しい、すばらしいと賛美する気持ちを表す。
こう並べてみると、どれも似たような感じだが、こと三椏に関しては、「うつくし」「うるわし」は言い過ぎの感じがし、「うまし」と読むことにした。
因みに、「三椏の花」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 三椏の三枝三枝に花の燦
② 三椏やどの枝先も花盛り
① 三椏の三枝三枝に花の燦
② 三椏やどの枝先も花盛り
①は、三椏の分かれた枝=三枝(さんし)に花が燦然(さんぜん)と咲いていることを詠んだもの。語呂合わせで調子を求めた。
②は、三つに分かれた、どの枝先も、花が満開になっていることを詠んだ。
三椏(三又ともかく書く)はジンチョウゲ科ミツマタ属の落葉低木。原産地は中国中南部、ヒマラヤ地方。12月頃から蕾ができ、それが3月から4月にかけて綻んで、黄色のラッパ状の小花を密集させて咲かせる。沈丁花に似た香りを放つ。
名前は、 既述の通り、枝が常に三本ずつに分岐することから付けられた。漢字の「三椏」の「椏」は「あ」とも読み、木の股のことをいう。園芸種で赤花三椏(あかばなみつまた)という赤色の花を咲かせるものもある。
樹皮には強い繊維があり、和紙の原料として用いられている。皺になりにくく、虫にも強いので1万円札などの紙幣や証紙など重要な書類に使われることが多いとのこと。
「三椏の花」を詠んだ句は多く、これまで何句か紹介したことがあるが、今回はそれ以外のものをいくつか掲載した。
【三椏の花の参考句】
三椏の咲くや泉声沢を落つ (水原秋桜子)
三椏の花のうす黄のなかも雪 (大野林火)
三椏の花のうす黄のなかも雪 (大野林火)
三椏の花をみにゆく板の橋 (辻田克巳)
三椏の花ゆ翅あるものの影 (山田弘子)
三椏の花ゆ翅あるものの影 (山田弘子)
三椏や紙漉村は渓沿ひに (鈴木良花)