■ みそかすもぼろかすもなくクロッカス
( みそかすも ぼろかすもなく くろっかす )
先日植物園に行った時、ある一画に色とりどりのクロッカスの花が咲き乱れていた。このクロッカスも春の代表的な草花で、公園の花壇などでよく見かける。
本日の掲句は、そんなクロッカスの名前の「カス」にかけて詠んだ戯れ句である。
最近、テレビやネットで、酷い言葉が飛び交っているが、もう少しクロッカスのように品良くいかないものかと思って詠んで見た。「クロッカス」は春の季語。
どうでもよいかも知れないが、「みそかす」「ぼろかす」をネット辞(事)典などで調べると以下のような説明がなされていた。
【みそかす】味噌を漉(こ)した時に生じる滓(かす)のことで、価値がないものの喩えとして使われたり、物の数に入らない者、仲間に入れてもらえない子供などを指して使われる言葉。「みそっかす」とも言う。
【ぼろかす】襤褸切れや滓のように価値のないもの。さんざんに悪く評価すること。また、そのようなものとして罵(ののし)るさま。
よく似た言葉に、「くそみそ」「ぼろくそ」があるが、激昂してとことん人を罵ったり貶(おとし)めたりすることは避けたいものである。
話は戻って、クロッカスに関しては、過去に以下の句を詠んだ。
【関連句】
① 紫も黄色も白もクロッカス
② クロッカス心も軽くクロッカス
③ 鵯が来てひょいと喰いけりクロッカス *鵯(ひよ)
①は、紫色、黄色、白色(薄紫)など様々な色の花が、かなり広い範囲で群生しているのを見て詠ん句。花色をクロッカスのクロ(黒)にかけた戯れ句。
②は、クロッカスという花の名前の響きに着目して詠んだ句。真ん中の促音「ッ、っ」が、春の陽気に感応し、非常に軽やかな感じがする。
③は、クロッカスの花壇に鵯(ひよどり、ひよ)が突然やって来て、花をひょいと咥え呑み込んだのを見て詠んだ。予期してなかったので少々驚いた。
クロッカスは、アヤメ科クロッカス(サフラン)属の多年草で、原産地は地中海沿岸から小アジア。日本には江戸時代に渡来。花期は2月初旬から4月。丈夫な植物だが日光が足りないと花付きが極端に悪くなるとのこと。
同じ仲間で晩秋に咲くサフランは、花を薬用やスパイスとして用いるが、クロッカスは観賞用のみに栽培される。そのため、春サフラン、花サフランとも呼ばれる。
クロッカスが俳句に詠まれるようになったのは昭和に入ってからだそうだ。以前にも何句か紹介したことがあるが、以下にはそれ以外の句をいくつか掲載した。
【クロッカスの参考句】
クロッカス咲きし佳きことありさうな (上原信子)
大地割れ彩の出でしはクロッカス (小路智壽子)
クロッカス外気窺ひつつひらく (西村和子)
髭に似ておどけ細葉のクロッカス (上村占魚)
クロッカスいきなりピアノ鳴り出しぬ (宮岡計次)