■ 古梅には枝ぶりという格があり
( こばいには えだぶりという かくがあり )
昨日、近くに用事があり、久しぶりに京都御苑に行ってきた。
広大な敷地であり、人も疎らで閑散としていたが、ある一画で大きな梅の木が、今が盛りと満開になっているのに出あった。
幹が太くて、樹齢も長いものと思われるが、その花とともに枝ぶりの見事さには感嘆させられた。
近くの説明書きには、この梅の木は「黒木の梅」という名前であること、そして、以下のことが記載されていた。
「九條家跡にあったものを大正天皇即位大礼の時、現在の場所に移植されましたが枯れてしまい、現在の木は接木により植継ぎされたものです。」
本日の掲句は、そんな古梅の印象を詠んだものである。下五の「格」は品格、風格の意で使った。「古梅」は「梅」と同様春の季語。
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ところで、よく聞く諺に「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」というのがある。これは、庭木の選定法を述べた言葉で、桜の枝は切るとそこから腐りやすくなるので切らない方が良く、梅は枝を切らないと無駄な枝がついてしまい切った方が良いという意味だそうだ。
でも、本当にそれだけなのか。更に調べていくと、「梅は花よりも枝ぶり」という言葉に出会った。確かに、日本画の梅の絵を見ると、独特な形をした枝に梅の花が配置されているものが多い。
ただ、こうした枝ぶりは放置したままでできるかというとそうではない。適度に剪定を行って、形を整えていかなければ逆さ箒のようになっていくとのこと。
明確に書かれたものはなかったが「梅切らぬ馬鹿」とは、単に切った方が良いというのでなく、まさに梅を美しく見せるために、切ること=剪定が不可欠だということを言っているものと思う。
更に調べていくと、「疎痩横斜(そそうおうしゃ)」という言葉に出会った。これは、梅の老成の美を表す言葉で、「疎」は枝のまばらさ、「痩」は木の肌のごつごつ感、「横斜」は横や斜めに延びている様子を表すとのこと。
もうすぐ桜も本格的に咲きだすが、ここで、梅の美しさ、桜の美しさの違いは何なのか、もう少し深く考えてみるのも面白かろう。
「梅」を詠んだ句は非常に多く、これまで何句も本ブログで紹介したことがあるので今回は割愛する。