■ 種漬花咲けば始まる野良仕事
( たねつけばな さけばはじまる のらしごと )
今日は、よく目にする草だが、名前が知られていないと思われる野草「種漬花(たねつけばな)」を取り上げたい。
この野草は、水田、道端などに群生し、茎の先端に白い穂状の花を咲かす。果実は細長い棒状で上向きにつける。
一見するとナズナ(薺)に似ているが、ナズナは三味線のバチに似た果実をつけるので容易に区別がつく。
名前は、この花が咲く頃に、種籾(たねもみ)を水に漬け、発芽を促して苗代に蒔くので付けられたそうだ。
本日の掲句は、そのことを知った上で詠んだ句である。
「種漬花」は季語になってないようだが、今の時期に咲くので春の季語に準じた扱いをした。
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余談だが、昔は種漬けをし、苗代に種を撒いて苗を育て、それを束ねて田植えをした。農家に生まれたので、幼い時にその田植えを手伝い、小遣いを貰ったことを覚えている。
しかし、現在は相当やり方が変わってきているようだ。まず1970年代に田植機が普及しだし、田植えという家族総出の重労働が次第になくなってきた。
これは、農業の担い手の減少、高齢化に対応すると同時に大規模化、低コスト化などを狙ったもの。野良仕事も時代に応じてどんどん変わってきているようだ。
種漬花の種類は多く、区別がなかなか困難である。多分、写真のものは「道種漬花(みちたねつけばな)」と思われる。
在来の種漬花によく似ているが、花はそれよりも小さく開花が早い。1980年代に確認されたヨーロッパ原産の帰化植物で、乾燥した場所でも育ち、現在生育地を急速に広げているとのこと。
「種漬花」は、季語になっていないせいもあり、それを詠んだ句が見つからなかったので参考句は割愛する。