■ 突として響く初音の美空かな
( とつとして ひびくはつねの みそらかな )
その日は、透き通った青空も見え、清々しい気分で歩いていた。すると、突然、澄んだ鶯の声が上方から聞こえてきた。
本日の掲句は、その時の様子を詠んだ句。この時期の鶯の囀り(さえずり)は、音程がずれるなどうまくないのだが、今回聞いたものはしっかりしていた。
尚、「初音」とは、一般に「虫や鳥類についてその季節最初に聞こえる鳴き声。」のことだが、俳句で単独に使われる場合、鶯のものを指し春の季語になっている。
写真は、初音を聞いた場所近辺の風景。いつものことだが、鴬は声が聞こえても姿を捉えることが難しく、この日も写真に撮ることができなかった。
因みに、「初音」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 鈍色の空を震わす初音かな
② 御陵の杜に清しき初音かな *御陵(みささぎ):天皇及び三后の墓
③ 空色の初音かすかに杜の朝 *杜(もり):神社の森
②は、3月中頃に御陵の杜で聞いた初音。
③は、3月末頃のある晴れた日に聞いた初音。この頃にはすっかり春らしくなっていた。
お気づきのことと思うが、同じく「初音」と言っても、当方がその年に初めて聞いたものを指しているので、場所や時期は毎年違っていて一定しない。
若鳥は幼い頃に聞いた他の鶯のさえずりを覚えておいて、次の年の春にそれを思い出しながら練習し、だんだんうまくなっていくそうだ。また、大人になっても、毎年春先から練習を重ね、上手な囀りができるようになっていくとのこと。
【初音の参考句】
この石に腰をおろせと初音せり (村越化石)
初音して湖北藁屋のうすあかり (鷲谷七菜子)
初音して少し潤みし向う山 (鍵和田釉子)
大空に塵とゞめざる初音かな (小川軽舟)
初音聞く灯油のポンプ押しながら (山田節子)