■ 寄り添えば温かきかな枇杷の花
( よりそえば あたたかきかな びわのはな )
この時期、花が少ないとは言え、全く咲いていない訳ではない。山茶花(さざんか)などは、今方々で咲き乱れている。
ただ、その他にどんな花が咲いているかと言うと数えるほどしかない。今日取り上げた枇杷(びわ)の花がその一つ。
しかしこの花、薄茶色の萼(苞)に被われて咲くためか、目だたず見過ごされることが多い。それでも、近づいて見れば五弁の梅にも似た花の形をしており、それなりに花の趣がある。
本日の掲句は、そんな花が沢山寄り添って咲いているのを見て詠んだ句である。
茶色の萼が毛布あるいはマフラーのようにも見え、それを「温かき」と詠んだ。「枇杷の花」は冬の季語。
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因みに、枇杷の花に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 川べりの陰にこそりと枇杷の花
② 装いはベージュのショール枇杷の花
①は、ある川べりに植えてあった枇杷の木に、ひっそりと咲いていた枇杷の花を見つけて詠んだ句。
②は、枇杷の花を包んでいる茶色の萼に注目して詠んだ句。この句では花の萼を「ベージュのショール」に喩えたが、「外套」、「ビロードのマント」に喩えて詠んだこともある。
枇杷は、バラ科ビワ属の常緑高木で原産地は中国。年平均気温15度以上、最低気温は-5度以下にならない場所が栽培に適しているといわれており、日本では千葉県より北では本格的な栽培は行われていないとのこと。花期は11月~12月。果実は5月~6月頃に鈴なりになる。
名前は、果実(葉ではない)の形が楽器の琵琶(びわ)に似ているところから付けられたとのこと。漢字の「枇杷は、漢名をそのまま用いている。
「枇杷の花」を詠んだ句はままあり、本ブログでも何句か紹介したことがあるが、以下にはそれ以外のものを掲載した。
【枇杷の花の参考句】
軒裏の蜂の古巣や枇杷の花 (会津八一)
枇杷の花犬も主も微恙あり (堀口星眠)*微恙(びよう):軽い病気。
水汲みに僧が出てきぬ枇杷の花 (星野麥丘人)
硝子戸に月のぬくもり枇杷の花 (矢島渚男)
あたたかな夜風が顔に枇杷の花 (岸本尚毅)