■ うまそうに柿柿色に色づけり
( うまそうに かきかきいろに いろづけり )
食欲の秋ともいうが、今、近所になっている柿もうまそうに色づいてきている。もっともそれが甘柿なのか、渋柿なのか判別がつかないが、あの艶のある柿色は食欲を誘う。
本日の掲句は、そんな柿の実を見て詠んだ句である。「柿」は言うまでもなく秋の季語。
ところで、「柿色」とは、柿の果実のような鮮やかで濃い橙色のことだと一般的に知られているが、「柿色」という色名は、細かくは以下の二系統四色に分かれるそうだ。
(「日本の伝統色」というサイトより要点引用)
〇柿の実の色の系統
・一般の「柿色」
・照柿色(てりがきいろ)
… 赤味の濃い柿色
〇柿渋で染めた色の系統
・柿渋色(かきしぶいろ)
・柿渋色(かきしぶいろ)
… 灰がかった黄赤色
・団十郎茶(だんじゅうろうちゃ)
・団十郎茶(だんじゅうろうちゃ)
… 赤味の薄い茶色
江戸時代は、「柿色」と言えば柿渋の柿色だけを指していたが、近年ではもっぱら柿の実の赤味の橙色が「柿色」と呼ばれるようになったとのこと。
話は戻って、「柿」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 柿なれど鐘のならない古き寺
② 柿熟れて啄む鳥もなかりけり
③ 実を一つ残し裏戸の柿紅葉
① は、正岡子規の句「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」のパロディー。お寺も後継者難と聞く。
②は、柿が熟れて鈴なりになっているが、採る人もおらず啄む鳥さえ全く見かけない情景を見て詠んだ句。
③は、ある家の柿の木に実が一つだけ残され、葉が紅葉している様子を詠んだ。こういう柿を「木守柿(きもりがき、こもりがき)」というとのこと。
柿は、植物分類学上では、柿の木(かきのき)と言われ、カキノキ科カキノキ属に属する落葉樹である。原産地は東アジアで、日本には弥生時代の頃に渡来したとのこと。
柿には甘柿と渋柿があるが、甘柿は渋柿の突然変異種と考えられており、日本特産の品種だそうだ。
「柿」を詠んだ句は非常に沢山あり、本ブログでも何句か紹介したことがある。以下には、それ以外のものを選定し掲載した。
【柿の参考句】
山柿の一葉もとめず雲の中 (飯田蛇笏)
柿の朱を点じたる空こはれずに (細見綾子)
柿の木の俄に増えて熟るゝ実よ (相馬遷子)
熟れ柿に色休まする深曇 (林翔)
鷹とほる柿爛熟の蒼の中 (飯田龍太)