■ 鱗雲空を海とし漂へり
( うろこぐも そらをうみとし ただよえり )
夏の代表的な雲と言えば入道雲(にゅうどうぐも)=積乱雲だが、秋と言えばやはり鱗雲(うろこぐも)である。秋だけ出現するという訳ではないが、澄み切った空を覆うように広がる秋の鱗雲は壮大で美しい。
本日の掲句は、そんな鱗雲が、巨大な魚のような形をして空に漂っているのを見て詠んだ句。あまりにも大きすぎて写真で全姿は撮れなかった。
ところで、鱗雲は、巻積雲(けんせきうん)の俗称だが、周知の通り、魚の鱗に似ていることからその名がついた。この雲には、他にも鯖雲(さばぐも)、鰯雲(いわしぐも)という呼び名がある。
鯖雲は、鯖の背の模様のように波状になっていることから、また、鰯雲は、鰯の群れのように見えることからそう呼ばれるようになったといわれている。鰯が大漁になる兆しでもあるとのこと。
俳句などで、どの呼称を使うかは各人の好みによるが、自分としては小さい時から鱗雲に慣れ親しんでおり、もっぱらこの呼称を使う。
他に似たような雲として羊雲(ひつじぐも)があるが、こちらは高積雲(こうせきうん)の俗称で1つ1つのかたまりが鱗雲よりも大きい。ただ、実際に区別するのは難しい。
尚、鱗雲、鰯雲、鯖雲はいずれも秋の季語になっている。羊雲は不明。
因みに、「鱗雲」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① うろこ雲何とでっかい魚かな
② うろこ雲顔があるなら拝ませろ
③ 大鷲の翼の如く鱗雲
①は、鱗雲を文字通り魚の鱗に見立て、何とでっかい魚かと詠んだ。
②は、その魚に顔があるなら、どんな顔をしているのか見たいので、拝ませろと詠んだ。
③は、大鷲が翼を広げて飛翔しているような感じで、鱗雲が空を覆っているのを見て詠んだもの。
この雲を「鰯雲」「鯖雲」で詠んだ句も結構多いが、参考句は「鱗雲」に限定して掲載した。
【鱗雲の参考句】
花芒払ふは海の鱗雲 (芥川龍之介)
鱗雲時には鱗落したり (塩川雄三)
稲を干す村の夜空の鱗雲 (中拓夫)
整はぬまま移りゆく鱗雲 (本居三太)
天界の流れは速し鱗雲 (江上貴善)
鱗雲時には鱗落したり (塩川雄三)
稲を干す村の夜空の鱗雲 (中拓夫)
整はぬまま移りゆく鱗雲 (本居三太)
天界の流れは速し鱗雲 (江上貴善)