■ 秋山に浅葱斑が乱舞せり
( あきやまに あさぎまだらが らんぶせり )
今は様々な秋の花が植えてあるが、先日行った時は盛りを過ぎた花も多く、華やかさは今一つだった。
そんな庭園で、思いがけなく出くわしたのが、一画に植えてあった藤袴(ふじばかま)に群がる「浅葱斑(あさぎまだら)」である。
ざっと数えてみると十数頭(匹)はいた。こんなに沢山の浅葱斑を一か所で見たのは始めであり、暫し佇んで、その乱舞を眺めた。
本日の掲句は、その様子をそのまま詠んだ句である。上五に「秋山」の季語をおいたのは、浅葱斑が季語でないため。特に平地でなく山で見たことを強調したかった。
ところで、浅葱斑は、季節によって1500kmから2500kmも移動するという渡り蝶として、一般にもよく知られている。
春には、台湾や沖縄諸島で成蝶になったものが、暖かい南風に乗って本州へ渡ってくる。秋になると本州で成蝶になったものが、北から南に吹く大風に乗り南西諸島へと向う。
浅葱斑の寿命は長いもので約半年。渡ったところで卵を産み一生を終えるので、北上するグループと南下するグループは違う世代だそうだ。
それにしても、あの小さな蝶が子孫を残すためとはいえ、こんな大移動をしているとは・・・。
秋風や二千キロゆく渡り蝶
この句は、初めて浅葱斑を実際に見、その生態を知った時に詠んだ句。その時は、こんな蝶がいるのかと非常に驚いたことを記憶している。
翅は半透明の水色で、鱗粉が少ないのが特徴。名にある「浅葱」は青緑色の呼称。
「浅葱斑」を直接詠んだ句は見つからなかったので、参考句は割愛する。