■ 襤褸菊の綿毛だらけや蜘蛛の網
( ぼろぎくの わたげだらけや くものあみ )
今年は、新参の草もいくつか生えているが、中でも沢山根付いたのが「段戸襤褸菊(だんどぼろぎく)」。以前紹介したことのある「野襤褸菊(のぼろぎく)」よりも一回り大きい襤褸菊である。
本日の掲句は、その襤褸菊の綿毛が、その上方に張られていた女郎蜘蛛(じょろうぐも)の網(巣)一面にかかっているのを見て詠んだ句である。その情景は、写真の通り何とも珍妙な感じだった。
恐らく女郎蜘蛛は、こんなところに網を張るんじゃなかったと悔やしがっているのではないか。そう思い、顔を見たが小さくて確認できなかった。襤褸菊の方もこんなはずじゃなかったと思っているだろう。
尚、「襤褸菊」は季語になっていないので、掲句では「蜘蛛の網(巣)」が夏の季語で夏の句となる。写真の「段戸襤褸菊」は、秋に咲くので季ずれになるが、夏に咲く襤褸菊もあるので句としては辛うじて成立する。
因みに、過去には「野襤褸菊」で以下の句を詠んでいる。
貧しくも心はうらら野襤褸菊
これは、水前寺清子がかつて歌った「いっぽんどっこの唄」をヒントに詠んだもの。「ぼろは着てても こころの錦~♪」。
「襤褸菊」は元々「沢菊(さわぎく)」の異名だが、果実期にタンポポのような白い綿毛(冠毛)ができて、それが襤褸くずのように見えることからその名がついた。そして、その様子が似ているということで、襤褸菊に他の言葉をつけて命名されたいくつかの植物がある。
「段戸襤褸菊」もその一つで、キク科ダケダグサ属の一年草。原産地は北アメリカ。1933年に愛知県段戸山で初めて発見されたのが和名の由来。花期は8月~10月で、花は淡い黄色で上向きに咲くが、タンポポのように開くことはない。
他に、「紅花襤褸菊(べにばなぼろぎく)」があるが、この植物は、キク科ベニバナボロギク属の一年草。アフリカ原産で紅色の花が下向きに咲くのが特徴。花が開かないのは、段戸襤褸菊と同様。花期は7月~12月。
また、「野襤褸菊(のぼろぎく)」は、キク科サワギク連キオン属の一年草。欧州原産で花は段戸襤褸菊よりも一回り小さく1cm程度。花期は通常は3月~9月と長く、温暖な地域では一年中見られる。
「襤褸菊」は季語になっていないせいか、詠まれた句はほとんどないので、参考句は割愛する。