■ 秋風にトレニアそよぐ無邪気かな
( あきかぜに とれにあそよぐ むじゃきかな )
どの花についても言えることだが、、最初の印象というのは意外と忘れがたく、それがその後の句作りに大きな影響を与えることがある。
この「トレニア」について言えばも、数年前に道端に咲いているのを見た時に、まるで幼い子供が大きな口を開けて歌っているように見えた。その時の印象から最初に詠んだのが以下の句である。
トレニアのるんるんとしてあどけなき
ただ、トレニアは季語でないので、後に以下のように詠み直した。
トレニアのあどけなきかな秋日和
本日の掲句は、そんな印象を引きずりながら、風に戦ぐ(そよぐ)様子を見て詠んだ句である。「あどけない」と「無邪気」はほぼ同義。本句では「秋風」が秋の季語。
因みに、同様の印象から、過去には以下の句を詠んでいる。いずれも戯れ句の類ではあるが。
【関連句】
① 声合わせ トレニアそらし秋の園
② 秋空に大口開けてトレニアそ~
①は、中七を「ドレミファソラシ」をもじって「トレニアそらし」として詠んだもの。下五は幼稚園などをイメージし、秋の園(えん)と読む。
②は、①を少し変えて詠んだもの。
トレニアはゴマノハグサ科トレニア(ツルウリグサ)属の一年草または多年草。原産地は、東南アジア、アフリカなどで明治初期に渡来した。花色は豊富で、濃青色や淡青色、ピンク色、黄色などがある。花期は、5月~10月と長い。
トレニアという名前は、スェーデンの東インド会社に派遣されていた牧師「トレン(O.Toren)」の名前に因んだもの。和名には、夏菫(なつすみれ)、花瓜草(はなうりぐさ)、蔓瓜草(つるうりぐさ)などがある。
「夏菫」で夏の季語にするのも良いのではと思うが、春を代表する季語の「菫」とかなり印象が違うため、それで詠む気にはなかなかなれない。
季語でないせいもあり「トレニア」を詠んだ句はほとんどないので、参考句は割愛する。