■ さ迷えばつくづくつくつくぼうしかな
( さまよえば つくづく つくつく ぼうしかな )
*真如堂:天台宗の寺院で正式名は真正極楽寺。三井家の菩提寺で三井一族の墓石が並んでいる。
そんな境内を逍遥していると、聞こえてきたのが「つくつくぼうし」の忙しない鳴き声。かしましいアブラゼミなどの蝉時雨の音はいつの間にか途絶え、独り鳴く声は、切なく耳に響いた。
本日の掲句は、そんな情景に遭遇して詠んだ句である。
上五で使った「さ迷う」という言葉は、「彷徨う」とも書くが、今回は敢えて「さ迷う」を使った。中七で使った「つくづく」は、「つくづく思う」のあれ。
「つくつくぼうし」は「法師蝉」「つくつくし」とも言い秋の季語
因みに、「つくつくぼうし」に関しては、先日以下の句を詠み、本ブログに掲載したばかりである。
盂蘭盆や法師蝉鳴く裏参道 (一部修正)
その他では、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 遅がけに忙しなく鳴く法師蝉
② お盆過ぎ耳につくつくつくつく法師
③ 法師蝉もういいようと鳴き止みぬ
②は、「つくつく」を繰り返し、調子を求めた句。
③は、法師蝉が最初に「ツクツクボウシ」を10数回繰り返し、その後「モウイイヨ」と3~4回ほど繰り返して鳴き終わる。そんな様子を詠んだ。
ところで、動物の鳴き声は人によって聞こえ方が違うようだが、覚えやすいように、人間の言葉、時には意味のある言葉やフレーズに当てはめたりすることがある。これを「聞きなし(ききなし)」という。
「つくつくぼうし」の名前は、まさにその聞きなしに由来するが、その鳴き声を「オーシツクツク」と「ツクツク」は後という説が昆虫の専門家では多数派だそうだ。そこで再度じっくり聞いてみた。自分にはどうしても「ツクツクボウシ」に聞こえるのだが・・・。
特徴のある蝉のせいか、「つくつく法師」「法師蝉」を詠んだ句は非常に多い。そこで今回は特に「つくつく法師」で詠んだ句をいくつか選んで以下に掲載した。
【つくつく法師蝉の参考句】
鳴き立てゝつくつく法師死ぬる日ぞ (夏目漱石)
また微熱つくつく法師もう黙れ (川端茅舎)
また微熱つくつく法師もう黙れ (川端茅舎)
主婦多忙つくつく法師鳴きはじむ (阿波野青畝)
我狂気つくつく法師責めに来る (角川源義)
夕山河 つくつく法師鳴きつくし (市橋一男)
我狂気つくつく法師責めに来る (角川源義)
夕山河 つくつく法師鳴きつくし (市橋一男)