■ 池の辺に蜻蛉休まる寒枯藺
( いけのべに とんぼやすまる かんがれい )
今日取り上げた「寒枯藺(かんがれい)」という植物は、ほとんどの人は見たことがないか、見ていても名前を知らない人が多いのではないだろうか。
かく言う自分も、その名前を知ったのは、1年ほど前のことである。
植物園の池辺に植えてあり、それが群生している景には、一幅の絵になる風情がある。
また、その花が面白く、葉に直接くっついて咲いている感じである。ただ、後で調べてみると、葉に見えるものは断面が三角形の茎で、葉は退化しているとのこと。
先日は、その植物のある池を眺めている時に、思いがけなく塩辛蜻蛉が茎の先にとまり、本日の掲句を詠んだ。
「寒枯藺」は季語でないので、本句では「蜻蛉」が季語(秋)。
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寒枯藺は、カヤツリグサ科ホタルイ属の多年草。日本全国、朝鮮・中国・インドネシアに分布する。池沼などの湿地で、特に根元が水に浸ったようなところに生えることが多い。
葉が発達せず、見かけ上は茎のみからなる植物である。花茎はほぼ直立し、全体に緑色でつやがある。茎の断面はきれいな三角形。高さは70~100cm、先端に向けて少しだけ細まる。
花期は7~10月。茎の先端に花序が出るが、その基部から出る単一の苞葉が茎の延長のようになっているので、外見的には先の尖った茎の、先端からすこし下の側面に出るように見える。
花序は多数の小穂が4個から多い場合は20個ほど、頭状に集まったもので、小穂には柄がない。小穂は長さ1~2cmの長楕円形で先端は多少尖り、淡緑色から褐色を帯びる。
名前の由来について、植物学者牧野富太郎氏は、おそらく「寒枯れ藺(い)」で、冬に地上部が枯れても、その茎が立っている様子に基づくと推定している。尚、藺草(いぐさ)は、イグサ科で科は異なる。
「寒枯藺」は季語でないので、それを詠んだ句はほどんない。そこで、今回は「蜻蛉」を詠んだ句をいくつか掲載した。
【蜻蛉の参考句】
蜻蛉やとりつきかねし草の上 (松尾芭蕉)
蜻蛉や村なつかしき壁の色 (与謝蕪村)
蜻蛉のさらさら流れ止まらず (高浜虚子)
とどまればあたりにふゆる蜻蛉かな (中村汀女)
蜻蛉行くうしろ姿の大きさよ (中村草田男)
蜻蛉や村なつかしき壁の色 (与謝蕪村)
蜻蛉のさらさら流れ止まらず (高浜虚子)
とどまればあたりにふゆる蜻蛉かな (中村汀女)
蜻蛉行くうしろ姿の大きさよ (中村草田男)