■ 昨日の夢を残しつ酔芙蓉
(さくじつの ゆめをのこしつ すいふよう )
この花は、早朝は白い花を咲かすが、それが次第に淡い紅色(ピンク)を帯びだし3時ごろには完全に紅色に変色する。その様子が、酒を飲んで酔いが回り顔を赤らめる様子に似ていることから、この名がついた。
ところで、この花は、見る時期によって白芙蓉にも紅芙蓉にも見え、酔芙蓉かどうか分からない。しかし、早朝に見れば簡単に見分けることができる。それは、白い花の周辺に、紅く萎んだ前日の花が必ず残っているからである。
本日の掲句は、その紅く萎んだものを「昨日の夢」に喩えて詠んだ。「酔芙蓉」は夏の季語。
因みに、「酔芙蓉」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① ふわふわと少し遅れて酔芙蓉
② 昼下がりいい加減にて酔芙蓉
③ 人の生酔うて終えたし酔芙蓉
①は、酔芙蓉が通常の芙蓉よりも遅れて咲くことに着目し、多分酔うたせいで遅れて咲いたんだろうと詠んだ。
②は、昼下がりの2時ごろ見た時に、「いい加減に」=「丁度良い具合に」ピンク色に染まっているのを見て詠んだ。
③は、「花の生酔うて終わるか酔芙蓉」の対句。人生も酔芙蓉にあやかって酔うて終えたいものだというのが句意。
芙蓉は、アオイ科フヨウ属の落葉低木で、原産地は日本、中国など。花期は7月末~10月初頃。朝咲いて夕方にはしぼむ1日花で、長期間にわたって毎日次々と開花する。花には、一重咲き、八重咲きがあり、花色は白色、ピンク、紅色などがある。
酔芙蓉は、その変種であり、朝の咲き初めは白色、昼は薄いピンク、夕方は紅色に変化する。八重咲きが多いが一重のものもある。尚、「水芙蓉」と書くと蓮の意となるので要注意。
*(八重)
花は、同時期に咲く木槿(むくげ)とよく似ているが、木槿が枝を直線的に上方に伸ばすのに対し、芙蓉は枝分かれして横にこんもりと広がること、葉が木槿よりも広く大きいことなどから容易に区別できる。
*(八重)
「酔芙蓉」の句はままあり、過去にもいくつか紹介したことがあるが、以下では、それ以外のものを掲載した。
【酔芙蓉の参考句】
酔芙蓉をはりの花は酔ふかし (水原秋櫻子)
白といふはじめの色や酔芙蓉 (鷹羽狩行)
午後三時酔芙蓉なほゑひもせすん (山田弘子)
午後三時酔芙蓉なほゑひもせすん (山田弘子)
今日は今日昨日は昨日酔芙蓉 (川口咲子)
朝風にまだ素面なる酔芙蓉 (富田道子)*素面(しらふ、すめん)
朝風にまだ素面なる酔芙蓉 (富田道子)*素面(しらふ、すめん)
*午後2時ごろの酔芙蓉