■ 土筆とも竹ともいわず木賊立つ
( つくしとも たけともいわず とくさたつ )
旅館や料亭などの前庭などで時々見かける草に木賊(とくさ)がある。この草、外見は竹のミニチュアのようでもあり、伸びすぎた土筆(つくし)のようでもある。
本日の掲句は、そんな木賊が林立している様子を見て詠んだ句である。「木賊」は秋の季語。
ところで、この草を初めて見た時は、なかなか草と認識できなかった。遠くから見ると、朝顔などを絡ませる園芸用の支柱が何本も立っているように見える。
それが、草だと分かって注意して見ると、近辺でもいろんな所に植えてあることが確認できた。
何の変哲もない草だが、ただただ真っすぐにに伸びる、その草姿が愛でられる所以のようだ。生け花でもよく使われているのを見る。
因みに、木賊については7月27日の記事で、空蝉とともに取り上げた。
空蝉のしがみつきたる木賊かな
木賊は1m以上にも伸び、蝉の羽化には、もってこいの草のようである。
また、過去には他に以下の句も詠んでいる。
【関連句】
① ミニチュアの竹林つくる木賊かな
② シンプルに生きよとばかり木賊立つ
①は、木賊が林立している様子をそのまま詠んだ句。
②は、ただ真っすぐに伸びる木賊を見て詠んだもの。まさに「シンプル イズ ベスト」である。
木賊は、トクサ科トクサ属の常緑性シダ植物。山中の湿地に自生。観賞用に庭園などに植える。茎は直立していて中は空洞、同科同属のスギナなどとは違い枝分かれしない。茎の先端には、土筆の頭部のような花(胞子葉群)をつけ、ここに胞子ができる。
茎の表皮が固く、ざらざらとしていて、細工物を研ぐのに使われたことから「とぐくさ」→「とくさ」と言われるようなった。それ故「砥草」とも書く。
木賊の字は漢名からの当て字。賊には損なう、擦り減らすという意味がある。どこかの盗賊に由来する訳ではない。硬い茎で歯を磨いたことから、歯磨草(はみがきぐさ)という別名もある。
「木賊」を詠んだ句はままあり、その中からいくつか選定して以下に掲載した。木賊は年中見られるので他の季語を使い、秋以外の句にしているものも多い。
【木賊の参考句】
真青な木賊の色や冴返る (夏目漱石)
木賊原小学校のありにけり (富安風生)
水漬きつつ木賊は青し冬の雨 (中打汀女)
岩風呂や木賊にかかる夕陽見て (桂信子)
こまやかに木賊吹かるる雪解かな (岸本尚毅)
こまやかに木賊吹かるる雪解かな (岸本尚毅)