■ 峰雲のあなたに棲むや水の精
(みねぐもの あなたにすむや みずのせい )
本日の掲句もその一つで、取り上げた「峰雲(みねぐも)」は夏を代表する季語。
それが鴨川の上流の北山の上に見事な姿を見せていたので、水が少なくなっている鴨川に雨をもたらすことを願って詠んだ。
句調については、カール・ブッセ作上田敏訳の「山のあなた」という詩を多少意識した。
「峰雲」とは、聳え立つ山並みのようにわき立つ積乱雲のことで「雲の峰」とも言う。俗称で知られる「入道雲」は、坊主頭の妖怪の意。
また、各地方に独特の呼び名があり、京都では「丹波太郎」「山城次郎」「比叡三郎」と呼ぶそうだ。
更に、関東では「坂東太郎」、九州では「筑紫二郎」、四国では「四国三郎」と呼ぶとのこと。
因みに、「峰雲」「雲の峰」「入道雲」では、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 峰雲を突き抜き光る大日輪
② どっかりと琵琶湖見下ろす雲の峰
③ うだる街覗き込むごと入道雲
①は、峰雲を突き抜けて射す太陽の姿に、神々しさを感じて詠んだ句。
②は、比叡山に登り、琵琶湖の上にどっかりと浮かんだ雲の峰を眼下に見て詠んだ。
③は、うだるような夏のある日、京都の街を覗き込むように高く盛り上がった入道雲を見て詠んだ。
「峰雲」「雲の峰」「入道雲」などを詠んだ句は非常に多いが、今回は特に「峰雲」で詠んだものに限定して、いくつか以下に掲載した。
【峰雲の参考句】
乳母車帰る峰雲ばら色に (橋本多佳子)
峰雲にかさなりそだつ峰雲あり (篠原梵)
峰雲を生みつぐ海の力業 (原裕)
峰雲に招待席のあるごとし (大木あまり)
峰雲にあつけらかんと下着干す (北野民夫)