■ 花臭木といえど蝶には甘からん
( はなくさぎと いえど ちょうには あまからん )
夏の終わりから秋にかけて咲く花に「臭木(くさぎ)」という花がある。
ただ、この花、名前の響きが良くなく、花もあまり見栄えがしないので、これまで句に詠んだことがなかった。
本日の掲句は、近くの疏水沿いに咲いていた臭木の花を見ていた時、黒い揚羽蝶が飛んできて、花から花へと渡りながら、夢中になって吸蜜するのを見て詠んだ句である。
この花木は、「臭い木」という名前がついているが、蝶には甘い香りがするのだろうというのが句意。
実のところ、葉や茎は臭いが、花や萼には甘い香りがある。「花臭木」「臭木の花」は、「臭木の実」とともに秋の季語。
臭木に関しては、その実について昨年以下の句を詠んでいる。
ブローチにおひとついかが臭木の実
ブローチに良いのではと思って詠んだ。
9月~11月に結実する。
臭木は、シソ(クマツヅラ)科クサギ属の落葉小高木。日本全国のほか朝鮮、中国などの山野の林縁や河岸などに自生する。花期は7月~9月。花は、下方が細長い筒状で、上方が平たく五つに分かれ、いくぶん紅色を帯びる。
花弁は白で、萼は緑色から次第に赤くなり、甘い香りがする。 昼間は揚羽蝶が、日が暮れると雀蛾などが吸蜜に訪れるとのこと。
名前は、葉や茎を触ると一種異様な臭い(薬品臭)がすることに由来する。名前にある「臭」を嫌ってか「常山木」という当て字で表記されることもある。別名に臭桐(くさぎり)がある。
「花臭木」「臭木の花」を詠んだ句はあまりないが、以下には、ネットで見つけた句をいくつか掲載した。
【花臭木等の参考句】
花臭木滝真向に真白なり (石田波郷)
療養所古びて茂る花臭木 (松崎鉄之介)
川舟へ臭木花咲く坂よけれ (波多野爽波)
日照雨して熊野古道花臭木 (行方克己)
水懈く臭木の花を浮べをり (轡田進) *懈し(だるし、たるし)