■ 病葉の流れによどむ錦かな
( わくらばの ながれによどむ にしきかな )
先日、疏水沿いを歩いている時に、川面に色とりどりの落ち葉が重なって、えも言えぬ模様を描いているのを見た。
本日の掲句は、そんな景を見て詠んだ句である。上五の「病葉(わくらば)」とは、「病気や虫のために変色した葉。または、夏の青葉の中にまじって、赤や黄色に色づいている葉。」のこと。夏の季語になっている。
病葉と聞いて、ある程度の年配の方は、仲宗根美樹が歌っていた「川は流れる」を思い出すのではないだろうか。その歌詞(下掲)の冒頭部分に使われており、それを長い間意味も知らず記憶していた。
川は流れる (1961年)
病葉を 今日も浮かべて
街の谷 川は流れる
ささやかな 望み破れて
哀しみに 染まる瞳に
たそがれの 水のまぶしさ
掲句は、その病葉が川の淀みに錦のような模様を作っていると詠んだ。それを見て何をどう感じたかは、ここでは触れない。
因みに、同じような場面を見て、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① わくら葉の川面に創る秋模様
② わくら葉のパッチワークの水面かな
①は、病葉が水面に作った模様が、秋の紅葉(黄葉)風景のようだと詠んだもの。
②は、同じ模様を、いろいろな布の切れ端を合わせて作るパッチワークに喩えて詠んだ。
余談だが、この模様や色合いを見た時に、誰かの絵画で見たことがあると思った。誰の絵だったのか、ネットで調べてみると、帝政オーストリアの画家グスタフ・クリムトの絵だと分かった。雰囲気が何となく似ている。興味のある方はネットで検索していただきたい。
病葉について詠まれた句は結構ある。これまでも何句か紹介したことがあるが、今回はそれ以外のものをいくつか選定し掲載した。
【病葉の参考句】
病葉や大地に何の病ある (高浜虚子)
病葉の降りそのいろに河流る (滝春一)
病葉の渦にのりゆく迅さかな (石橋秀野)
巨いなる病葉舞へり人の中 (草間時彦)
病葉や鋼のごとく光る海 (飴山實 )