■ 謎多き紫御殿は伏魔殿
( なぞおおき むらさきごてんは ふくまでん )
俳句ブログを開設してから、もう5年以上経過する。その間もっぱら植物の句を詠み、掲載してきた。
いろいろな植物を見るにつけ、それぞれに面白い特徴をもっていることに驚きもし、不思議にも思った。
今日取り上げた植物について言えば、茎も葉も花も全てが紫づくめ。そして名前が「紫御殿(むらさきごてん)」とは恐れ入る。
本日の掲句は、そんな謎めいた草花を詠んだもの。下五の「伏魔殿」とは、「悪魔がひそむ殿堂。陰謀・悪事などが絶えずたくらまれる所。」のことで、同じ紫色でも暗く深みのある紫色からイメージした。
実際に、外壁が全て暗紫色の御殿が建っている場面を想像すると、少し不気味ではある。
尚、「紫御殿」は季語になっていないが、本句では、夏の季語に準じて使用した。
ところで、何故こんな名前が付けられたのか。その由来を一度調べたことがあるが、よく分からなかった。全体が紫色なので「紫」が付くのは十分頷けるが、それに「御殿」を付けたのは何故か、全く謎のままである。
因みに、過去には以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 花も葉も気高きことよ紫御殿
② さみだれに濡れて艶めく紫御殿
③ 夕涼の紫御殿はおぼこにて *夕涼(ゆうすず)
①は、紫色が古来より王位や最上位を表す色で、非常に高貴な色とされており、そのこと意識して詠んだ句。
②は、紫御殿が梅雨=五月雨(さみだれ)に濡れている様子を詠んだ。
③は、花は葉に比べると非常に小さく、そのことを「おぼこ」と詠んだ。「おぼこ」とは、「まだ世慣れていないこと。また、そのさまや、そういう人。」
③は、花は葉に比べると非常に小さく、そのことを「おぼこ」と詠んだ。「おぼこ」とは、「まだ世慣れていないこと。また、そのさまや、そういう人。」
紫御殿は、ツユクサ科ムラサキツユクサ(トラデスカンティア)属の常緑性多年草。原産地はメキシコで、日本には1950年代に渡来したとのこと。花期は6月~11月と長い。
茎と葉が濃い暗紫色で、その先にピンクの可愛らしい花をつける。葉は厚みがあり多肉質で乾燥に強く、観葉植物として用いられることが多い。
同属の「紫露草(むらさきつゆくさ)」と花や姿が似ているが別種の植物である。別名で、「パープルハート」(紫のハート)、「セトクレアセア」などがある。
季語になっていないせいもあり、「紫御殿」を詠んだ句はほとんどないので、参考句は割愛する。