■ 一片の乱れ許さじ菊花展
( いっぺんの みだれゆるさじ きっかてん )
先日、京都の植物園に行った時に、たまたま菊花展が催されていたので寄ってみた。会場は、大芝生地の一画に設けられたていて、大菊、小菊(懸崖作り、盆栽作り)などの選りすぐりの菊が展示されていた。
上句は、そんな菊花展での菊を見た時の印象を詠んだものである。「乱菊(らんぎく)」ともいうように、大菊などは長い花弁を入り乱れさせて咲くが、全体としては、全く乱れのない姿を保っている。「一片の乱れ許さじ」は、そのことを示すため、敢えて使って見た。「菊花展」は、「菊」「大菊」「小菊」などとともに秋の季語。
因みに菊に関しては、これまで以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 大菊は美々しく咲くが定めなり
② 大菊の手塩にかけて美しき
③ 大輪を凌ぐ小菊の花の団
①は、小菊や野菊と違い、大菊は、ただ一輪(三本仕立てでは三輪)にてその美しさを極めなければならない定め(運命)を持っていることを詠んだ。②は、その大菊が、4月頃から11月頃までの長期間、手塩にかけて育てられ、育ったからこそ美しいと詠んだ。③は、小菊は群れ咲き一団を作ることで、大菊を凌ぐほどの美しさを持つことを詠んだ。
ところで日本の国花といえば菊、それとも桜? 実のところ、法律で定めた国花はないそうだ。しかし、桜は、日本人に最も親しまれている花で、菊は皇室の紋章にもなっている花。だから両方とも実質上の国花といっても良いだろう。
菊の香やならには古き仏達 (松尾芭蕉)
あるほどの菊抛げ入れよ棺の中 (夏目漱石)
たそがれてなまめく菊のけはひかな (宮澤賢治)
ひたと閉づ玻璃戸の外の風の菊 (松本たかし)
清水を祇園へ下る菊の雨 (田中冬二)
ひたと閉づ玻璃戸の外の風の菊 (松本たかし)
清水を祇園へ下る菊の雨 (田中冬二)