■ 秋闌けてお腹でっぷり女郎蜘蛛
( あきたけて おなかでっぷり じょろうぐも )
昨日、立冬の日を迎えたが、本格的な紅葉がこれからなので、気分的にまだ冬に入れないと述べた。実は、この他にも冬に入れない理由がある。それは、秋季の季語で詠んだ句あるいは詠みたい句がいくつも残ったからである。したがって、暫くは秋季の句を織り交ぜてブログに投稿させて頂くが、ご容赦願いたい。
この蜘蛛の名前は、女郎蜘蛛(じょろうぐも)という。「女郎」という言葉は、今では遊女などを連想させるが、かつては一般の女性に使われていた。また、身分の高い女官の上臈(じょうろう)になぞらえたとも言われている。
従って、女郎蜘蛛という名前は、その姿が雅やかで艶やかだと感じられ、つけられたとものと思われる。確かに他の蜘蛛と比べれば、その容姿に雲泥の差がある。しかし、家になんか入ってきたらぞっとするのは間違いない。
この蜘蛛、梅雨の頃に見た時は、米粒に8本の長い脚を付けた感じだったが、今は丸々と太っている。食欲の秋で食べすぎためと言いたいところだが、子供を産むために栄養をつけたというのが本当のところだろう。 (豆知識:脚の数は昆虫6本、蜘蛛8本)
掲句はそんな女郎蜘蛛の姿を詠んだ句である。尚、「蜘蛛」「女郎蜘蛛」は夏の季語なのだが、掲句では「秋闌けて」を季語とし秋季の句とした。
因みに女郎蜘蛛に関しては以下の句を過去に詠んだ。
関連句:女郎蜘蛛欲しくば命かけるべし
秋になり繁殖期を迎えると、オス(上掲写真上方の小さい蜘蛛)は背後から交尾の機会をうかがう。正面からいくとメスに食われてしまうからである。オスにとっては求愛もまさに命がけなのである。関連句はそのことを詠んだもの。
【蜘蛛の参考句】
雲ゆくや行ひすます空の蜘蛛 (飯田蛇笏)
暮れてゆく巣を張る蜘の仰向きに (中村草田男)
菖蒲より菖蒲へ蜘蛛の絲長し (松本たかし)
くもの糸一すぢよぎる百合の前 (高野素十)
夕蜘蛛のつつと下り来る迅さ見る (中村汀女)
雲ゆくや行ひすます空の蜘蛛 (飯田蛇笏)
暮れてゆく巣を張る蜘の仰向きに (中村草田男)
菖蒲より菖蒲へ蜘蛛の絲長し (松本たかし)
くもの糸一すぢよぎる百合の前 (高野素十)
夕蜘蛛のつつと下り来る迅さ見る (中村汀女)