■ 残る鴨土手は斑にうす緑
( のこるかも どてはまだらに うすみどり )
ここは鴨川の上流に位置し、もうかなり草も生えてきていると思っていたが、まだまだ岸辺や中州は薄茶色の枯草が覆っていた。
それでも、よく見れば、薄緑色の草が斑に見え、少しづつではあるが春らしくなってきていた。
そんな川中には、だいぶ少なくなった鴨たちが、ゆったりと泳ぎながら、時々水中に顔面をつけ餌をあさっている。
本日の掲句は、そんな長閑な情景を詠んだ句である。
「残る鴨」とは、「春深くなっても北方へ帰らずに残っている鴨。」のことで春の季語になっている。
春雨や食はれ残りの鴨が鳴く
「春雨がしとしとと降る中、鴨の鳴き声が聞こえてくる。あの鴨は、冬の間にうまく猟師から逃れた、食われ残りの鴨なのだろう。」というのが句意。この句では、「残る鴨」を「食はれ残りの鴨」と詠んでいるが、それが何とも滑稽であり憐れでもある。
【残る鴨の参考句】
残る鴨記憶の端にねむりをり (篠田悌二郎)
残る鴨羽打ち止まざる水しぶき (沢木欣一)
雨あとの空を掻きゆき残る鴨 (橋本榮治)
大方は小さき鴨や残る鴨 (岸本尚毅)
葛飾の夕日が好きで残る鴨 (中嶋秀子)