■ 突として山手に聞こゆ初音らし
( とつとして やまてにきこゆ はつねらし )
あまり大きな声ではなかったが、どうも鶯(うぐいす)の囀りのようである。まだ本格的でなく、やや遠慮気味で音程も少し狂っていた。
本日の掲句は、そのことを詠んだ句。「初音」とは、一般に「虫や鳥類についてその季節最初に聞こえる鳴き声。」のことだが、俳句で単独に使われる場合は、鶯の初音を指し春の季語になっている。
写真は、初音を聞いた場所近辺の風景。声が聞こえても姿jは見えない。しばらく鳴いた後、どこかへ飛び立ったのか何も聞えてこなくなった。
因みに、「初音」では過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 初音ゆえちょっと外れてホケキョケキョ
② 鈍色の空を震わす初音かな
③ 御陵の杜に清しき初音かな *御陵(みささぎ):天皇及び三后の墓
④ 空色の初音かすかに杜の朝 *杜(もり):特に神社の森をいう。
また、大人になっても、毎年春先から練習を重ね、上手な囀りができるようになっていくとのこと。だから、初春よりも春の終わりから、夏の初め頃の鳴き声が一番美しい。
同じく「初音」と言っても、当方がその年に初めて聞いたものを指しているので、場所や時期は毎年違っていて一定しない。
【初音の参考句】
初音してまだねむたさの田いちまい (鷲谷七菜子)
源流の目覚めうながす初音とも (中野陽路)
初音して海ひらけくる切通し (水原春郎)
初音聞く灯油のポンプ押しながら (山田節子)
初音聞く世界遺産の原始林 (田中康委子)