■ 道の辺はペンペン草の宴かな
( みちのべは ぺんぺんぐさの うたげかな )
薺と言えば、春の七草の一つであることは知っている人も多いと思うが、町中で見かけることはあまりない。
それが、たまたま街路樹の下の狭い土地に群生していたので、近づいて見ると、あの三味線の撥(ばち)に似た実を沢山つけていた。
その実の形から、薺は「ぺんぺん草」あるいは「三味線草」とも言われている。
本日の掲句は、そのことに寄せて詠んだ句である。沢山の実が揺れていたので、賑やかな宴(うたげ)に喩えて詠んでみた。
「薺」は春の七草の一つなので新年の季語になっているが、「薺の花」「薺花」「ぺんぺん草」「三味線草」とすると春の季語になる。
因みに、「ぺんぺん草」では、過去に以下の句を詠んでいる。趣向は本日の掲句とほとんど変わらない。
調子よくぺんぺん草とは愉快なり
名前の由来は、夏になると枯れることから夏無(なつな)になった、あるいは、撫でたいほど可愛い花の意味で撫菜(なでな)となったなど諸説ある。
ただ、この草も町中では雑草として駆除されてしまい、今は見つけることが非常に難しくなった。あまり整備されすぎ、だんだんと味気なくなるのもどうかと少し心配になってくる。
【薺等の参考句】
よく見ればなづな花咲く垣根かな (松尾芭蕉)
妹が垣根三味線草の花咲きぬ (与謝蕪村)
行燈やぺんぺん草の影法師 (小林一茶)*行燈(あんどん)
ぺんぺん草奏づる風が出て来たり (高澤良一)
雨の粒ぺんぺん草のペンペンに (辻桃子)