■ 水温むシンクロナイズに番い鴨
( みずぬるむ しんくろないずに つがいいがも )
カモ類の鳥は、近辺でも非常に多くみられるが、番い(つがい)で行動しているのをよく見かける。先日も賀茂川の中州付近で仲良く採餌しているのを見かけた。その姿が実にユーモラスで思わず笑ってしまった。
カモ類でもキンクロハジロなどは潜水が得意で身体ごと水に潜ることができるが、写真のオナガガモやマガモなどは身体半分だけつけて採餌する。番いで同時にやるとまるでシンクロナイズ・スイミングをやっているように見える。
*シンクロナイズ:同時化すること。時間的に一致させること。シンクロナイズ・スイミングは、技の完成度・同調性・技術的表現力などを競い合う水泳競技。
本日の掲句は、そんな情景を見て詠んだ句である。何度も何度も繰り返してやるので、しばし川岸に佇み、その妙技を楽しんだ。季語は「水温む」(春)。「鴨」は冬の季語だが、この句では考慮しない。
水温み池の杭にも苔ぞむす
これは、腐りかけた杭の先に新しい緑の苔が生えている景を見て詠んだ句。まさしく春の到来を感じさせた。
【水温むの参考句】
水ぬるむ頃や女のわたし守 (与謝蕪村)
これよりは恋や事業や水温む (高浜虚子)
水温む静かに思ふことのあり (星野立子)
さざなみは神の微笑か水温む (楠本憲吉)
逆流をすこしこころみ水温む (上田五千石)