■ 冬日さす白妙の衣那智の滝
( ふゆひさす しろたえのきぬ なちのたき )
ホテルよりバスで30分弱のところにあり、「鎌倉積石階段」を降りていくと、暫くして、大杉の枝の間から滝らしきものが見えてきた。更に近づくと長大な滝の全容が見えてきた。まさしく想像以上の景観である。
本日の掲句は、その時見た滝の印象を断崖にかかった「白妙の衣」に喩えて詠んだ。おりしも当日は晴天で、冬の薄日が滝を照らし神々しく感じた。尚、「滝」は夏の季語なので、上五に「冬日」をおいて冬の句とした。
ところで、「那智の滝」を詠んだ句と言えば、真っ先に挙げられるのが、高浜虚子の以下の句である。
神にませばまことうるはし那智の滝
また、水原秋桜子の以下の句も、那智の滝を詠んだと言われている。
滝落ちて群青世界とどろけり
いずれの句も、非常にスケールの大きい句で、この滝に相応しい名句である。
春の陽を浴びて奈落へ華厳瀧
この滝は、幅10mで落差が97mある。春とはいえ、まだ枯木がほとんどで、非常に寂漠としていたが、水が滝壺に向かって真っ直ぐに落ちる姿は壮観だった。
「那智の滝」は俳枕にもなっており詠まれた句も多い。以下には、上記以外の句をいくつか掲載した。
【那智の滝の参考句】
那智の滝見るたのしみの花の旅 (星野立子)
一月や素の水落す那智の滝 (森澄雄)
むらさきを重ぬる秋の那智の滝 (川崎展宏)
轟きに虹を架けたり那智の瀧 (五島高資)
落下する先も虚空や那智の滝 (稲岡長)