■ 熊野路や寒鴉飛び交う大古杉
( くまのじや かんあとびかう おおこすぎ )
この道は、樹齢数百年という巨大な杉が林立する森の中にあり、苔むした石畳の階段となっている。全長約600m、高低差約100mあるそうだ。石段を踏みしめながら下りていくと、時折、数羽の鴉(からす)の甲高い声が木の天辺の方から聞こえてきた。
本日の掲句は、その時の情景を詠んだ句である。中七の「寒鴉(かんあ)」とは、冬のカラスのことで、「かんがらす」とも読む。俳句独特の言葉で冬の季語となっている。
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熊野は熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)を核として、太古の昔の自然信仰に始まり、仏教伝来後は神仏習合を経て修験の道場、あるいは浄土信仰・観音信仰の聖地として、常に人々の信心を集めてきた。
(熊野那智大社)平安時代に参詣したのは、主に法皇や上皇などの皇族、貴族や女官だったが、室町時代以降は武士や庶民が参詣するようになった。切れ間なく行列ができた様子から「蟻の熊野詣」とも言われ、「お伊勢参り」と並び称された。
尚、熊野三山、熊野古道などは「紀伊山地の霊場と参詣道」という名称で、2004年にユネスコ世界遺産に登録された。
(熊野速玉大社)
熊野路(熊野古道)は俳枕となっており、詠まれた句も多い。その内の何句かを以下に参考句として掲載した。
【熊野路(熊野古道)の参考句】
熊野路に知る人もちぬ桐の花 (向井去来)
熊野路や三日の粮の今年米 (与謝蕪村) *粮(かて):食糧、食物
熊野路の四温のひと夜雨こまか (矢島渚男)
熊野路の塵もとどめぬ夏薊 (小泉八重子)
熊野路や屋根に石置く氷菓店 (北野民夫)
熊野路の塵もとどめぬ夏薊 (小泉八重子)
熊野路や屋根に石置く氷菓店 (北野民夫)
*この日は、短時間で熊野三山をすべてお参りしたが、それらに関しては写真のみの掲載とした。
(熊野本宮大社)