■ お社の甍に見ゆる寒椿
( おやしろの いらかにみゆる かんつばき )
椿は、その漢字が示すように春の花とされるが、冬季に咲くものもあり、俳句では総称して「寒椿」あるいは「冬椿」という。ただ、花の形はそれほど違わないので、句において違いを表現するためには、取り合わせなどの工夫を要する。
本日の掲句は、ある神社の屋根瓦越しに見た椿を題材に詠んだ。この神社はあまり知られていないため、現場には人もおらず森閑としていた。
*お社(おやしろ):神を奉ってある神殿や建物などを丁寧に言う言い回し。
尚、写真の方は、最初の2枚を除き、別所で撮ったものである。いずれも寒椿の一種だが、品種名はややこしいので割愛する。
(1)山茶花は、秋~冬にかけて花を咲かせ る。椿は、早春に花を咲かせる。ただし、山茶花には春咲きの春山茶花があり、椿には冬咲きの寒椿がある。
(2)山茶花は、花びらがばらばらになって散る。椿の花は花ごと首から落ちる。
(3)山茶花の葉柄や若枝などには繊毛が生えているが、椿は無毛である。
(4)山茶花の葉にはぎざぎざが目立つ。椿の葉にはぎざぎざがなく表面が光っている。
【寒椿、冬椿の参考句】
火のけなき家つんとして冬椿 (小林一茶)
寒椿咲きたる家の日向かな (田中冬二)
山の雨やみ冬椿濃かりけり (柴田白葉女)
花咲いておのれをてらす寒椿 (飯田龍太)
葉籠りの花の小さきは冬椿 (清崎敏郎)