■ だだだだーんと枯蔦の這う土塀
( だだだだーんと かれつたのはう どべい )
その様子を見た時に何故か思い浮かんだのが、ベートーヴェン作曲の交響曲「運命」の出だしの「だだだだーん」というメロディー。そのことから、当初以下の句を詠んだ。
「運命」の枯蔦の這う土塀かな
ただ、この句では、上五の「運命」がベートーヴェンの曲を指しているとは、誰も思わないだろうと思い、掲句のように詠み替えた。
もっとも、「だだだだーん」としても、それから「運命」を連想する人はほとんどいないかもしれない。とはいえ、雰囲気は上句よりも伝わるだろう。
尚、掲句は7-7-3 の17音破調の句。「枯蔦」は冬の季語。
ところで、蔦という植物は、それが絡まるものに応じて、いろいろな模様を作る。また、季節によって葉の色を変え、多様な景観を作る。その面では、自然の「芸術家」と言っても良い。
青蔦の土塀に描く
和の心
この句は、寺の築地(ついじ)の土壁に青葉を広げている蔦を見て詠んだ句である。その情景が何となく日本画を彷彿とさせ、下五を「和の心」とした。「青蔦(あおつた)」は夏の季語。
*写真は6月下旬に撮影
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奏でる如く蔦紅葉
この句は、掲句と同じ土塀を見て詠んだ句だが、この時は「シャンソン」という言葉が出てきた。あの有名な曲「枯葉」からの連想だが、少し落葉した後の景がメロディーの譜表にも見えた。「蔦紅葉(つたもみじ)」は秋の季語。
*写真は11月中旬に撮影
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参考句に関しては、「枯蔦」で詠まれたものをいくつか掲載した。
【枯蔦の参考句】
枯蔦のしがみついたる巖かな (正岡子規)
枯蔦や絵馬は古りたる神の杉 (寺田寅彦)
枯蔦や石の館の夜の雨 (松根東洋城)
枯蔦となり一木を捕縛せり (三橋鷹女)
枯蔦のぐるり取り巻く御用邸 (高澤良一)