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Channel: 写真・俳句ブログ:犬の散歩道
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参道はどしゃぶりのごと蝉時雨

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■ 参道はどしゃぶりのごと蝉時雨  
                    ( さんどうは どしゃぶりのごと せみしぐれ )

イメージ 1近畿地方も昨日梅雨明けになったようだ。空の色は、灰色から透き通る青に変わり、気温も一気に30度を超えてきた。更に、近辺では、それを待っていたかのように蝉の声が大きくなってきた。

昨日も、朝の散歩で近くの寺に寄ったが、参道に入るや蝉が一斉に鳴きだした。しかも、それがいくつも重なるように。本日の掲句は、その時の様子を詠んだ句である。

中七の「どしゃぶりのごと」というのは少し大げさかも知れないが、幾つかの蝉のグループが、間を開けずに鳴き出すとそんな感じになる。「蝉時雨」は、「多くの蝉が一斉に鳴きたてる声を時雨(しぐれ)の降る音に見立てた語」で夏の季語。

蝉とは、これから9月初頃までおつきあいすることになるが、それだけに詠んだ句も多い。蝉時雨に関しても10句程詠んでいるが、比較的気に入っているものとしては以下の句がある。

      【関連句】
       ① 梅雨明けになるや俄かに蝉時雨
       ② 降りしきる雨にも負けず蝉時雨
       ③ それほどに呼ぶのは誰ぞ蝉時雨

イメージ 2①は、梅雨明け宣言が出された途端、待っていたかの如く、蝉時雨の音が急に大きくなってきたことを詠んだ。
②は、雨が降りしきる中でも、それに負けじと鳴いている様子を詠んだもの。中七は、宮澤賢治の有名な詩「雨にも負けず」からの引用。

③は、懸命に鳴く蝉の声に、必死になって誰かを呼ぶ人の思いをダブらせて詠んだ句。蝉の声は、時には何とも悲痛に聞こえることがある。

イメージ 3蝉は、卵→幼虫→成虫という不完全変態(蛹:さなぎを経ない)をする昆虫である。幼虫として地下生活する期間が長く、3~17年(アブラゼミは約6年)に達するそうだ。成虫期間は僅か1~2週間。

鳴くのはオスの成虫で、腹腔内に音を出す発音筋と発音膜、音を大きくする共鳴室、腹弁などの発音器官が発達しており、懸命に鳴いてメスを呼び命をつなぐ。そして、ついには落蝉となって一生を終える。

イメージ 4長い長い暗闇の生活から地表(世間)に出て、華々(はなばな)しく?一生を終える。こんな生き方ってどうなんだろうと思ったりもするが、良いかどうかは蝉に聞いてみるしかないだろう。

       【蝉時雨の参考句】
         浮嶋やうごきながらの蝉時雨     (小林一茶)
         笠とるや杜の下道蝉時雨        (正岡子規)
         蝉時雨庇の下を通ひ路に        (大野林火)
         蝉時雨中に鳴きやむひとつかな    (加藤楸邨)
         蝉時雨木々ふるはせて光堂      (平畑静塔)

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