■ 参道はどしゃぶりのごと蝉時雨
( さんどうは どしゃぶりのごと せみしぐれ )
昨日も、朝の散歩で近くの寺に寄ったが、参道に入るや蝉が一斉に鳴きだした。しかも、それがいくつも重なるように。本日の掲句は、その時の様子を詠んだ句である。
中七の「どしゃぶりのごと」というのは少し大げさかも知れないが、幾つかの蝉のグループが、間を開けずに鳴き出すとそんな感じになる。「蝉時雨」は、「多くの蝉が一斉に鳴きたてる声を時雨(しぐれ)の降る音に見立てた語」で夏の季語。
蝉とは、これから9月初頃までおつきあいすることになるが、それだけに詠んだ句も多い。蝉時雨に関しても10句程詠んでいるが、比較的気に入っているものとしては以下の句がある。
【関連句】
① 梅雨明けになるや俄かに蝉時雨
② 降りしきる雨にも負けず蝉時雨
③ それほどに呼ぶのは誰ぞ蝉時雨
③は、懸命に鳴く蝉の声に、必死になって誰かを呼ぶ人の思いをダブらせて詠んだ句。蝉の声は、時には何とも悲痛に聞こえることがある。
鳴くのはオスの成虫で、腹腔内に音を出す発音筋と発音膜、音を大きくする共鳴室、腹弁などの発音器官が発達しており、懸命に鳴いてメスを呼び命をつなぐ。そして、ついには落蝉となって一生を終える。
【蝉時雨の参考句】
浮嶋やうごきながらの蝉時雨 (小林一茶)
笠とるや杜の下道蝉時雨 (正岡子規)
蝉時雨庇の下を通ひ路に (大野林火)
蝉時雨中に鳴きやむひとつかな (加藤楸邨)
蝉時雨木々ふるはせて光堂 (平畑静塔)