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Channel: 写真・俳句ブログ:犬の散歩道
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合歓を「ねむ」と読みける花の艶

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■ 合歓を「ねむ」と読みける花の艶
         (  ごうかんを 「ねむ」とよみける はなのつや )

イメージ 1合歓(ねむ)の花は、6月頃にも咲いていて盛りが終わったと思っていたら、今頃になってまた咲きだし、満開になっている。ネットで調べてみると、合歓の花は同じ木でも2度咲くようだ。

この花の名前の「ねむ」は、周知のとおり、夜になると葉を閉じて眠ったようになることに由来する。花の柔らかい印象からも「眠り」を連想させ、ぴったりの名前のように思われる。

一方、当て字の「合歓」は中国名からきている。ただ、この合歓(ごうかん)には、「男女が共寝して相歓び合う」という意味があり、夫婦円満の象徴として付けられたということは、意外と知られていないのではないだろうか。

「ねむ」という言葉には、親が幼児をあやすような響きがあるが、「合歓」には、もっと大人びた艶っぽい意味が込められている。そんなことを知り、詠んだのが掲句である。「合歓の花」は「花合歓」ともいい夏の季語。

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ところで「合歓の花」といえば、有名な句に松尾芭蕉の以下の句がある。

            象潟や雨に西施がねぶの花

この句では、「ねむ」のことを「ねぶ」と詠んでいるが、もともとは「ねぶ」で、それが音変化したものが「ねむ」だと言われている。「けぶり」を「けむり」「と言うようになったのと同じ。
*象潟(きさかた):秋田県所在の地名  *西施(せいし):中国、春秋時代の越の美女。

芭蕉がいた時期に「ねむ」と呼ばれていたかどうかは定かでないが、敢えて珍説を述べれば、上句で「ねむ」でなく「ねぶ」と詠んだのは、その響きが「愛撫」「慰撫」などに通じ、少々艶っぽい感じを出すためではないかと思う。試みに
「ねむ」とし、読み比べてみていただきたい。

イメージ 3因みに合歓の花に関しては、過去には以下の句を詠んでいる。

      【関連句】
       ① くすぐれば夢にほほ笑む合歓の花
       ② 見上げれば紅透けてあり合歓の花
       ③ 覚めざるを願う夢みし合歓の花

①は、乳飲み子が、母親に抱かれてぐっすりと眠っている様子をイメージしたもの。②は合歓の花の咲いた景をそのまま詠んだ句。③は、夢の中で、覚めないで欲しいと願ったが、覚めてしまったという体験を詠んだ句。

イメージ 4合歓の花とは、厳密に言えば、合歓の木(ねむのき)の花のこと。合歓の木は、マメ科ネムノキ属の落葉高木で、原産地は日本、南アジア。花期は6~8月。一つの花に見えるものは、小さな花が10~20個集まったもので、薄紅色の糸のような部分は長く伸びた雄蕊である。

「合歓の花」が詠まれた句は、これまでも何句か紹介したことがあるが、今回はそれ以外のものを幾つか以下に掲載した。

      【合歓の花の参考句】
       真すぐに合歓の花落つ水の上      (星野立子)
       九時過ぎてなほ明るしや合歓の花    (加藤楸邨)
       合歓の花沖には紺の潮流る       (沢木欣一)
       虹消えて虹の睫毛を合歓の花      (矢島渚男)
       合流の白濁はるか合歓の花       (西村和子)

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