■ 一面に陽気広げて黄水仙
( いちめんに ようきひろげて きずいせん )
白い花弁の真ん中に黄色の副花冠がある日本水仙は、日本的な清楚さがあり、どちらかという冬に似合う花だが、黄水仙は、花全体が黄色でそれと比べれば華やかで陽気な感じがする。掲句は、そんな花の印象を詠んだものである。黄水仙は春の季語。日本水仙は冬の季語。
ところで、ご承知の通り、黄色は色の三原色の一つであるが、これから段々とこの色の花が目だってくる。菜の花(なのはな)、蒲公英(たんぽぽ)、連翹(れんぎょう)、三椏(みつまた)、山吹(やまぶき)などなど。
これらの花が何故黄色を選んだのか知る由もないが、おそらくは、花粉を運ぶ虫たちにとっても視認性の高い色だからだろう。また、黄色は温暖色で開放感を与え、行動を活性化すると言われている。虫たちとても多分同じなのではないだろうか。
宋代から清代までの中国では、黄色は皇帝・皇位を表す色として尊ばれていたが、現代の中国では、黄色と書くと「エッチな」・「卑猥な」の意味となり、日本でいうピンクと同様の意味合いで使われるそうだ。
西欧のキリスト教の世界では、イエスを裏切ったユダの服が黄色だったことことから「裏切り」、「嫉妬」、「嫌悪」といったマイナスイメージがあるとのこと。また、イスラム教では死を象徴する。一方、ヒンドゥー教、道教、儒教、仏教にとっては最高色として尊ばれてきたそうだ。
日本では、奈良時代の冠位十二階において、上から7番目、8番目の位を示す色であったが、他の場面では特に重用されていない。
参考句は、黄水仙を詠んだものをいくつか掲載した。
【黄水仙の参考句】
俄雪日を泛べたり黄水仙 (水原秋桜子)
道端の垣なき庭や黄水仙 (前田普羅)
黄水仙尚霜除のありにけり (長谷川零余子)
突風や算を乱して黄水仙 (中村汀女) *算(さん)を乱す:散乱する
黄水仙ひしめき咲いて花浮ぶ (高濱年尾)