■ 冬晴れに夏柑の黄の眩しきや
( ふゆばれに なつかんのきの まぶしきや )
先日は、近くに寄ったので久しぶりに訪れたが、南門から入ると真っ先に見えたのが夏柑(夏蜜柑)の樹。たくさんの黄色い実が樹全体に光輝いて見えた。本日の掲句は、そんな情景を詠んだ句である。
尚、「夏柑」「夏蜜柑」は春の季語なので、本句では上五に「冬晴れ」を入れ、冬の句とした。「蜜柑」の方は冬の季語。
ところで、掲句では下五に切れ字「や」を使っているが、その用例は意外と少ないようだ。詠嘆の響きが弱いことなどがその理由のようだが、自分は「かな」や「けり」などで強く終わるよりも良いと思う場合などに時々使うことがある。
因みに、「や」を下五に使った参考句としては、以下のものがある。
【‘や’を下五に使った句】
足枕手枕鹿のむつましや (小林一茶)
本を積み庭草高く露けしや (山口青邨)
端居して濁世なかなかおもしろや (阿波野青畝)
咳の子のなぞなぞあそびきりもなや (中村汀女)
品書きの鱈といふ字のうつくしや (片山由美子)
話は戻るが、「蜜柑」、「夏柑」では、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 蜜柑の実黄色く熟れてドレミのミ
② 夏柑の聖樹の灯りに見ゆる日よ
①は、「ドレミの歌」を思い出して作った語呂合わせの句。声を出して読むと心浮き浮きする感じが出る。②は、クリスマス前に詠んだ句。遠くから見れば、クリスマスツリー(聖樹)に丸い星飾りが沢山つけられているように見える。
夏蜜柑(夏柑)は、ミカン科ミカン属の柑橘類の一つで、日本には江戸時代中期に渡来したそうだ。晩秋に色付くが、春先までは酸味が強く、当初食用には向かないと言われていたが、初夏になると酸味が減じることが分かり、夏の貴重な柑橘類として広く栽培されるようになったとのこと。夏橙(なつだいだい)ともいう。