■ 川べりに揺れてコスモス五六輪
( かわべりに ゆれてこすもす ごろくりん )
今、植物園や公園に行くと、コスモスが花壇一面に咲き誇っていて、秋らしい風情を醸しだしている。そんなコスモスも我が散歩道では見る機会が意外と少ないが、先日、川べりに数本植えてあり、白とピンクの花を咲かせているのを見た。
尚、下五に関しては何輪にすべきか少し迷った。実際には十輪近く咲いていたのだが、「十数輪」では川辺で静かに咲いている感じがでない。かといって「二三輪」では少なすぎるということで、咲き始めの「五六輪」とした。コスモスは、「秋桜」とも書き秋の季語。
ところで、、俳句では数詞を用いることも結構あるが、よく引用される句に以下のものがある。
鶏頭の十四五本もありぬべし
正岡子規が詠んだ句だが、これが名句かどうかに関しては、いろいろと論争がある。否定派は、「この句は単なる報告をしているに過ぎない。」「十四五本をを七八本などに置き換えうる。」などと批判する。肯定派は、「自己の”生の深処”に触れたのである。」「鮮やかな心象風景を示している。」などと賛美する。
ことほどさように、名句であるかどうかの評価は分かれるが、少なくとも本句は、「十四五本も」と具体的な数字で示したことが効果的で、「ありぬべし」と断定的に結んだ所に、強烈なインパクトを感じさせる句ではある。
話は戻って、コスモスに関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① コスモスの風やわらかき里の道
② コスモスの平らに和む夢を見し
①は、京都の北の方にある大原の里へ行った時に、田畑を囲むように咲いているものを見て詠んだ句である。②は、コスモスの元の意味である「宇宙」「世界」と、花の姿から感じとれる「平和」を結び付けて詠んだ句である。
コスモスは、キク科コスモス属の一年草。メキシコの原産で日本には明治時代に渡来。花期は8月~10月。花色は、白、ピンク、赤色など様々。
コスモスという花の名前は、ギリシア語の「秩序」「調和」「美しい」という意味の 「Kosmos, Cosmos」の言葉に由来し、「秩序整然とした美しい花」ということでつけられたそうだ。
また、日本に渡来した時は、秋に咲き、花弁の形が桜に似ているところから「あきざくら」と呼ばれ「秋桜」の字が当てられた。別名で、大春車菊(おおはるしゃぎく)とも呼ばれている。
コスモスを離れし蝶に谿深し (水原秋櫻子)
コスモスの花見えて駅現はれし (右城暮石)
望郷や土塀コスモス咲き乱れ (星野立子)
風船をつれコスモスの中帰る (石原八束 )
コスモスの花の上行く肩車 (大高時子)