■ 花野にて狐の孫を踏みにけり
( はなのにて きつねのまごを ふみにけり )
昨日は現の証拠という野草を紹介したが、実は、その花に混ざって、「狐の孫(きつねのまご)」という野草が所々に咲いていた。この花は、現の証拠よりも更に小さく、米粒よりも少し大きい花だが、見過ごしてうっかり踏んでしまった。![イメージ 3]()
本日の掲句は、そのことを詠んだ句である。狐の孫が植物の名前だと知らない人は、何と残酷なことを。動物虐待ではないかと思われたかもしれないが、幸いなことに、踏まれながらも何とか自力で立ち上がった。
尚、「狐の孫」は、季語になっていないので、掲句では、上五に秋の季語「花野(はなの)」をおいた。花野とは、萩、薄、野菊など秋の草花が咲き乱れている野原のことをいい、華やぐ春の野原に比べ、ものの憐れさを感じさせる。
ところで、何故、狐の孫という名前がついたのか。定説ではないが、花穂が狐のしっぽに似ていて、花の形が子狐の顔に似ているからだそうだ。そう言われれば似てなくもないが、何故「子」でなく「孫」なのか。依然謎は残る。
因みに、狐の孫に関しては、過去に、以下の句を詠んでいる。尚、これら句では、狐の孫を秋の季語に準じて使用している。
【関連句】
① 狐の孫よおめえの母ちゃんどこぞいる
② これはこれは狐の孫ではないかいな
①は、狐の孫だというので、母(かあ)ちゃんはどこかと聞いた句。当然ながら返答はなかった。②は、狐の孫に思いがけなく出会った時のちょっとした驚きを詠んだ句である。
キツネノマゴ(狐の孫)は、キツネノマゴ科キツネノマゴ属の一年草。原産地は日本、中国など。花期は7月~10月で、枝の先に穂状の花序をつけ、淡紅紫色の唇形の花をつける。花の種類には、白い花をつける「シロバナキツネノマゴ」、花がより小さい「キツネノヒマゴ」などがあるとのこと。別名に、「カグラソウ(神楽草)」があるが、これは、花穂が神楽に使う鈴に似ていることからつけられた。
狐の孫を詠んだ句はほとんどないので、参考句は割愛する。