■ 御所裏に可愛き盗人萩盛る
( ごしょうらに かわゆきぬすびと はぎさかる )
写真①盗人萩
その草花が、何と御所の外庭で広範囲に群生し、淡紅色の小さな花を咲かせていた。高貴な人がお住まいの「御所」のすぐ近くに「盗人」とは。その取り合わせが何とも面白く、最初に以下のように詠んだ。
御所裏に不埒な盗人萩盛る
*不埒(ふらち)
しかし、この草花、名前に似合わず、萩に似て非常に可愛い。とても「不埒な」だとは感じられない。そんなこともあり、掲句のように「可愛い」に変えた。尚、「盗人萩」が季語かどうかは定かでないが、掲句では「萩」がついているので秋の季語に準じて詠んだ。
写真②盗人萩の果実
ところで、何故「盗人萩」という名前になったのか気になるところだが、まず「萩」という名前は、花が似ているところから付けられたと容易に想像できる。残りの「盗人」だが、これは、果実(写真②)が盗人の忍び足の足跡に似ていることによるそうだ。そう言われれば似てなくもないが・・・。
因みに、過去には外来種の「荒地盗人萩(あれちぬすびとはぎ)」(写真⑤)を見て以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 怪しげな荒地盗人萩の道
② 裏通り盗人萩が忍び咲き
①は、怪しげな名前の響きを意識して詠んだ句。②は、「裏通り」と「盗人」と「忍び」という言葉の微妙な取り合わせで作った句。
写真③盗人萩
ヌスビトハギ(盗人萩)は、マメ科ヌスビトハギ属の多年草で在来種。茎は直立または斜上してよく枝分かれし、その茎に沿って淡紅色の蝶形花を咲かせる。花期は7月~9月頃。秋に節の数が2つの豆果ができるが、鉤(かぎ)形の細毛で衣服などによくくっつく。
写真④盗人萩
外来種のアレチヌスビトハギ(荒地盗人萩)は、北アメリカ原産の帰化植物。花の形や色は在来種に似ているが、それより2倍ほど大きく、在来種よりも華やかである。豆果の節は4~6個と多い。住宅地近辺の道端や空地などでは、こちらの方がよく見られる。(写真⑤)
写真⑤荒地盗人萩
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