■ 梅雨晴れ間レース衣着る茸見ゆ
( つゆはれま れーすきぬきる きのこみゆ )
先日行った植物園の竹笹園で、レースの衣を纏うように生えている珍しい茸(きのこ)を見た。(写真参照)名前は、衣笠茸(きぬがたけ)と言うそうだ。本日の掲句は、それを見て詠んだ句である。
ところで、「何々を見た」とか「何々が咲いた」という句は、説明俳句、日記俳句と言われ、良くない句の見本と言われている。掲句もその類のものであるが、私見では、ある種の感動が含まれていれば良いのであって、一概に否定されるべきでないと思っている。
掲句であれば、レースの衣を着たような茸そのものに珍しさがあり、梅雨の晴れ間の清涼感を感じた。すなわち、自分が良いと思うことが第一であり、他人が読んでどう思うかは、あまり気にしない。
勿論、どこかで選句を狙うのであれば、共感が得られるように詠む必要があるが、いつ何時でも修正できるのが俳句の手軽さであり、良さである。初めから「名句」を狙う必要など全くなく、まずは報告であろうが何であろうが、気軽に詠むことが大切だと思う。
衣笠茸は、スッポンタケ科キヌガサタケ属の茸(菌)類で梅雨時及び秋の竹林で多く見られる。非常に成長が早く、一日のうちで子実体(茸の本体)が伸びあがり、レース状のものも直ぐに萎れる。見られるのは朝の3時間ぐらいだそうだ。
レース状の白い部分は地面まで達することもあり、その美しさから「茸の女王」とも呼ばれるているとのこと。また、中華料理では、フカヒレ、燕の巣と並ぶ高級食材で、スープの具材にもなるそうだ。
参考句については、衣笠茸を直接詠んだもの2句と梅雨茸を詠んだもの3句を掲載する。
【梅雨茸の参考句】
衣笠茸竹落葉降り鳥語降る (三嶋隆英)
天網と衣笠茸の網目かな (延広禎一)
梅雨茸の人にも見せて捨てらるる (後藤夜半)
衣笠茸竹落葉降り鳥語降る (三嶋隆英)
天網と衣笠茸の網目かな (延広禎一)
梅雨茸の人にも見せて捨てらるる (後藤夜半)
梅雨茸や勤辞めては妻子飢ゆ (安住敦)
梅雨茸や天下にはかに動きたる (有馬朗人)
梅雨茸や天下にはかに動きたる (有馬朗人)