■ やけっぱち起こすな屁糞蔓かな
( やけっぱち おこすな へくそかずらかな )
知らない植物の名前を調べていくと、時々面白い名前に出合う。その中で特に酷い名前だと思ったのは、今日紹介する「屁糞蔓(へくそかずら)。酷い名前の植物は他にもいくつかあるが、これが東の横綱で、大犬の陰嚢(おおいぬのふぐり)が西の横綱といえるだろう。
ところで、なぜこの名前がつけられたのかというと、その名の通り、酷い臭いがするからだそうだ。そこで、花や葉、茎などを摘み取り、揉んで何度も臭いを嗅いで見たのだが、普通の草の臭いがするだけで、それほど臭いとは思えない。
念のためネットで調べると、同じように臭さは感じなかったという記事がいくつもあった。ただその一方で、草を刈り取る時に、銀杏(ぎんなん)の実の腐った臭い、あるいはスカンクのおならの様な臭いだったという記事もあった。
因みに、屁糞蔓(灸花)に関しては、過去にも何句か詠んでいる。
【関連句】
① 可愛くも屁糞蔓じゃ恥かしい
② 電飾のごとく光るは灸花
③ 案外と屁糞蔓も艶めかし *艶めかし(なまめかし)
①は、この名前を初めて知って、可哀想な名前だなと同情して詠んだ句。②は、この花が他の草花の枝葉を伝って咲いている姿をクリスマスツリーなどの電飾に喩えて詠んだ句。ここでは電飾の絡みで別名の灸花を使った。③は、名前は酷いがしっかり見ると艶めかしいと詠んだ句。不思議なもので、酷い名前も慣れてくると、あまり気にならなくなる。
屁糞蔓は、アカネ科ヘクソカズラ属の多年草。東南アジア、東アジアが原産地。花は、先が浅く5裂して平開した細長い鐘形の合弁花。花期は7月~9月。花言葉が「人嫌い」「誤解を解きたい」であるというのは頷ける。
尚、「屁糞蔓」には、別名として他に「早乙女花(さおとめばな)」がある。非常に上品な良い名前なのだが、「屁糞蔓」があまりにもインパクトが強いためか、この名で詠んだ句はほとんどない。
名をへくそかづらとぞいふ花盛り (高浜虚子)
野の仏へくそかずらを着飾りて (石田あき子)
雨の中日がさしてきし灸花 (清崎敏郎)
表札にへくそかづらの来て咲ける (飴山寛)
灸花無数に咲けば疎まるる (檜紀代) *疎む(うとむ)