■ 夏の土手花の小さき鬼野芥子
( なつのどて はなのちいさき おにのげし )
芥子という漢字には、「かいし」、「からし」、「けし」という三つの読み方がある。この内、「かいし」は、芥子菜(からしな)の種子で、「からし」は、芥子菜の種子を粉末にしたものをいう。
通常、芥子と言えば、透けるような花びらの花。それとは全く違うこの花の名前に、何故「芥子」がついているのか。調べてみると、どうも葉が似ているためらしい。念のためネットで画像を確認したが、確かによく似ている。
前書きが非常に長くなったが、本日の掲句は、そんな野芥子の仲間でも、葉に鋭い棘のある大きな「鬼野芥子(おにのげし)」を見て詠んだ句である。そのごつい体に似合わず、小さく可愛い花を咲かせていたのが印象的だった。
尚、「芥子の花」は夏の季語だが、「野芥子」、「鬼野芥子」は、花期が長いせいか季語になっていない。そこで、掲句では、上五に「夏の土手」を季語としておいた。
ところで、この野芥子、鬼野芥子は、近辺でも非常によく見かける野草である。高さ50cm~1.5mぐらいになるので結構目にもつく。しかし、花がたんぽぽに似ているとはいえ小さく、あちこちに花柄を伸ばし乱雑に咲いている感じがする。
茎も太く幾分曲がっており、葉も不揃い。人が愛でる花としては、いささか見劣りすると言わざる得ない。だから、これまで句に詠むとこともなかった。だが、そんなことには全くお構いなしに、この野草は、狭い場所でも隙あれば堂々と根を下し、花を咲かせている。それが雑草の雑草たる所以と主張するごとく。
鬼野芥子はキク科ノゲシ属の越年草。ヨーロッパ原産で、日本へは明治時代に渡来した。花期は3月から10月頃までと長い。葉は茎を抱き、縁には鋸歯があり先端が棘状になっていて触ると痛い。全体的に野芥子に比べると大きく荒々しい感じがあり、それが「鬼」を冠する由来となっている。
尚、鬼野芥子の参考句の方は、詠まれた句が少ないので割愛する。