■ 貧しくも心はうらら野襤褸菊
( まずしくも こころはうらら のぼろぎく )
今住んでいる所は住宅街だが、比較的山が近いせいか、道端や空地で様々な野草(雑草)が見られる。その名前も、従前に比べればかなり覚えたが、まだ分からないものも多数ある。
ある歌とは、水前寺清子が男着物で歌った「いっぽんどっこの唄」(歌詞下掲)。句からすぐに連想できた人は、恐らく同年代の人だろう。中七は、その歌詞を真似れば「心の錦」なのだが、今の時期にあわせるため、春の季語の「うらら」を入れ「心はうらら」とした。尚、「野襤褸菊」は、季語にはなっていないようだ。
いっぽんどっこの唄
作詞:星野哲郎 作曲:富侑栄
作詞:星野哲郎 作曲:富侑栄
ぼろは着てても こころの錦
どんな花より きれいだぜ
若いときゃ 二度ない
どんとやれ 男なら
人のやれない ことをやれ
どんな花より きれいだぜ
若いときゃ 二度ない
どんとやれ 男なら
人のやれない ことをやれ
ところで、この唄、1966年に大ヒットした歌だが、当時は、貧しくとも心は明るく、頑張れば何とかなるという希望が持てた時代だった。また、苦難にも根性で頑張る「男」像が前面に出された時代でもあった。今現在と比べると、さてどうか。その良し悪しは別として、まさに隔世の感がする。
因みに、「いっぽんどっこ」とは、「一本独鈷」と書く。「独鈷(どっこ)」とは、真言密教の法具の一つ。それが文様になったのが「独鈷紋」で、博多織の帯地文様として用いられた。「一本独鈷」とは連続文様が一本のもので、三本の「三本独鈷」もある。実のところ、今回調べて初めてその意味を知った。
野襤褸菊は、キク科サワギク連キオン属の越年生または一年生の広葉植物。欧州原産で、日本には明治初期に渡来。花期は通常は3月~9月だが、温暖な地域では一年中見られる。花は1cm程度の黄色い筒状の花。咲いていても蕾のように見える。
名前は「野に生える襤褸菊」の意だが、その襤褸菊は沢菊(さわぎく)のことで、果実期にタンポポのような白い冠毛ができて、それが襤褸くずのように見えることから名付けられたとのこと。そうも見えなくはないが、少し可哀そうな名前ではある。
尚、野襤褸菊の句は、全く詠まれていないようなので、参考句は割愛する。