■ 密やかに咲くや青木の十字花
( ひそやかに さくや あおきの じゅうじばな )
先日(4月22日)のブログで、塵のような楓(かえで)の花を紹介したが、それと同じほど、否それ以上に目立たない花に、青木(あおき)の花がある。青木は、葉も茎も一年中緑色の庭木であることはよく知られているが、その花については意外と知られていないのではないだろうか。かくいう自分も数年前に知った。
本日の掲句は、そんな花の紹介を兼ねて詠んだ句である。この花が、何ゆえに目立たぬように咲くのかわからないが、そこに謎めいた面白さも感じ句にしてみた。「青木の花」は春の季語で「青木の実」は冬の季語。因みに、青木の花に関しては、かつて以下の句を詠んだ。
忍者では?陰に青木の手裏剣の花
印象そのものを詠んだ戯れ句で、本日の掲句の元にもなった。
ところで、信号もそうなのだが、青木の葉は緑(みどり)なのに何故青(あお)木というのか。これまで何回か本ブログにも書いたが、それは、古代の日本語に、色を表す言葉が白、黒、赤、青の4つしかなく、青は、現在の緑色から紫色、灰色までを表す言葉だったためだそうだ。
青林檎、青汁、青葉などの言葉が現在まで残っているのは、緑色を青と表現していた頃の名残だとのこと。
古代の色が4色だったことに関連して面白いのは、色名だけの形容詞は「白い」「黒い」「赤い」「青い」の4つしかないこと。「黄色い」、「茶色い」という形容詞はあるが、これには「色」という語句が含まれるし、他の色には形容詞そのものがない。例えば「緑(色)い」「紫(色)い」とは言わない。更に、「白々と」「黒々と」「赤々と」「青々と」という副詞的用法を持つのもこの4色のみである。
*以上は、Wikipediaの「色名」を参照し、その要点を記載したもの。
青木は、日本原産で暖地の森林に自生するミズキ科の常緑低木。雌雄異株で雄花、雌花がある。形は同じ十字形だが、蕊の違いで容易に区別できる。花期は、3月~4月。冬に赤色で楕円形の実を結ぶ。日陰や寒いところででもよく育ち、公害にも強いので、日当たりの悪い場所の庭園樹として重宝がられているとか。
尚、「青木の実」の句は多いが、「青木の花」は目立たないせいか、ほとんど参考句らしいものが見当たらなかった。