■ 二月逃げ慌ただしく咲く種漬花
( にがつにげ あわただしくさく たねづけばな )
この野草は、水田、道端などに群生し、茎の先端に白い穂状の花を咲かす。果実は細長い棒状で上向きにつける。
一見するとナズナ(薺)に似ているが、ナズナは三味線のバチに似た果実をつけるので容易に区別がつく。
名前は、この花が咲く頃に、稲の種籾(たねもみ)を水に漬け、発芽を促して苗代に蒔くので付けられたそうだ。
本日の掲句は、この野草が、先日行った植物園の至る所に繁茂し、花を咲かせているのを見て詠んだ句である。「種漬花」は春の季語。
ところで、この句の上五「二月逃げ」とはどういう言葉なのか。初めて聞いたという人のために説明すると以下の慣用句から一部を切り取ったものである。
一月(いちげつ)往(い)ぬる 二月(にげつ)逃(に)げる 三月(さんげつ)去(さ)る
この慣用句は、正月から三月までは行事が多く、あっという間に過ぎてしまうことを調子よくいったもの。昔(江戸時代)から言われているそうだが、最近あるブログを見て知った。
種漬花咲けば始まる野良仕事
これは、種漬花の名前の由来を知って詠んだ句である。
花期は3月~5月。花は白色、花弁は4枚で長さ3~4mm。花後に長さ約2cmほどの細長い円柱形の果実を多数付ける。
別名に米薺(こめなずな)、田芥子(たがらし)などがある。
【種漬花の参考句】
種漬花けぶるごとくに過去ありぬ (小松崎爽青)
夕づきて種漬花の水の香に (荒井正隆)
田一枚種漬花の花満てる (滝沢伊代次)
種漬花休耕田を埋め尽す (近藤文子)
種漬花の花の頸まで雨後の水 (内山宏)
夕づきて種漬花の水の香に (荒井正隆)
田一枚種漬花の花満てる (滝沢伊代次)
種漬花休耕田を埋め尽す (近藤文子)
種漬花の花の頸まで雨後の水 (内山宏)
*愛媛県松山地方で種漬花の一種である「大葉種漬花(おおばたねつけばな)」を「ていれぎ」と呼び刺身のつまなどに使われている。正岡子規はそれを以下の句に詠んでいる。
秋風や高井のていれぎ三津の鯛