Quantcast
Channel: 写真・俳句ブログ:犬の散歩道
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1553

太古より羊歯の葉揺らす律の風

$
0
0
■ 太古より羊歯の葉揺らす律の風
                                            ( たいこより しだのはゆらす りちのかぜ )


イメージ 1先日、近くのお寺の参道を歩いていると、緑の「羊歯(しだ)」の葉が日に当たって揺れているのが目に入ってきた。

羊歯という植物は、「維管束植物のうちの花を咲かせない非種子植物」 (難しいので説明はパス)で、ワラビ・ウラジロ・ゼンマイなど世界に約九千種あると言われている。

コケ植物に次いで約4億5千年前に地上に進出した植物界のパイオニアで、その原型をとどめながら、今も立派に生存している。

そのこと自体、言葉で言い尽くせないほど凄いことのように思える。何しろ4億5千年前には、人類の影も形もなかったのだから。

本日の掲句は、そんな思いを持って詠んだ句だが、下五を何にするかについては少し悩んだ。





イメージ 2
というのは、「羊歯」そのものは縁起物として新年の季語になっているので、秋の句にするには秋の季語を持ってくる必要がある。 

そんな時、時々訪問するブログで「律の風(りちのかぜ)」という季語が紹介されていたことを思い出し、言葉の響きがいいのでそれを使うことにした。(一度使ってみたかったと言うのが本音。)


イメージ 3
尚、「律の風」とは、秋らしい感じの風のことだが、「律」は雅楽などに取り入れられた音階のひとつ。
雅楽の音階には、「呂(りょ)」と「律(りつ)」の二つがあり合、わせて「呂律(りょりつ)」と言う。

イメージ 4
日本では律は陰、呂は陽を表す言葉として用いられるが(中国では逆)、季節の印象では陽が春、陰が秋なので、秋の感じを「律の調べ」というようになった。「律の風」は、それからの派生したもの。尚、「呂の風」という言葉はない。

イメージ 5
ついでに言えば、雅楽を演奏する際に、呂の音階と律の音階がうまく合わないことを「呂律(りょりつ)が合わない」といい、そこから転じて「呂律(ろれつ)が回らない」という言葉が使われるようになったとのこと。

*呂律が回らない:舌が回らずに言っていることがよく聞き取れない状態のこと

イメージ 6
「律の風」という季語はあまり知られていないこともあり、詠まれた句はほとんどないが、ネットでいくつか見つけたの参考まで掲載しておきたい。

    【律の風の参考句】
     律の風砂に色あり波のあり    (石関洋子)
     露天湯に星こぼれけり律の風 (長沼冨久子)
     律の風チェンバロ響く名主蔵  (松本紀子)
     一舟の湖心離るる律の風    (藤井寿江子)

     律の風パン工房の煙出し    (川口襄)

イメージ 7

Viewing all articles
Browse latest Browse all 1553

Trending Articles