■ 守らねば廃るるばかり藤袴
( まもらねば すたるるばかり ふじばかま )
袴そのものが着られなくなったせいではあるまいが、野生種は準絶滅危惧種の一つになっている。(市販されているものは、ほとんどが雑種。)
ただ、この藤袴は、古くから愛でられた草花の一つで、万葉集や源氏物語にも登場する。それゆえ何とか後世に残そうと、かつて京都のテレビ局などが中心となり、藤袴プロジェクトを立ち上げ普及に努めてきた。
その甲斐あってか、最近は京都の神社仏閣などの境内でも時々見られるようになってきている。
本日の掲句は、そんな藤袴にかけて詠んだ句である。「藤袴」は秋の季語。
「守らねば」の対象になるのは、「藤袴」という古来の植物、日本の着物を象徴する「袴」だけでなく、日本の自然や伝統、文化などなど。一度途絶えたものは、復活がなかなか難しい
【関連句】
① 藤袴華やぎし世ぞ偲ばるる
② 藤袴そのもじゃもじゃが気持ち良き
③ 褄黒の恍惚として藤袴
②は、藤袴の花の先端から糸のようなもの(雌蕊)が出ているが、吸蜜している蝶も気持ち良さそうだと詠んだもの。
③は、「褄黒豹紋(つまぐろひょうもん)」という蝶が一頭(匹)、翅をゆっくり動かしながら夢中になって吸蜜している様子を見て詠んだ句。
名前は、花の色が藤色で、形が袴に似ていることからつけられた。
【藤袴の参考句】
音立ててまた来る山雨藤袴 (福田蓼汀)
重なりて木の暮れてをり藤袴 (永田耕一郎)
藤袴ゆれれば色を見失ふ (山下美典)
幾代経し蔵の罅かも藤袴 (松井葵紅) *罅(ひび)
かたまりてやうやく色の藤袴 (肥田埜恵子)