■ さえずりもなき森蔭に杜鵑草
( さえずりも なき もりかげに ほととぎす )
( さえずりも なき もりかげに ほととぎす )
とは言われても、実際にホトトギスを見たことがなかったので、それを知った時、ネット図鑑で念のため調べてみた。胸のあたりが確かに似ていた。
それにしても、その連想から、花の名前にしたというのは何とも面白い。
本日の掲句は、そんな謂れも考慮に入れ、ホトトギスが囀ることもない森蔭に、杜鵑草の花が静かに群生していると詠んだもの。
*写真は、方々でとったものから選定。
尚、鳥のホトトギスは、漢字で「杜鵑」「時鳥」「不如帰」「子規」などと書き、夏の季語になっているが、花の方は秋の季語。
区別するために、花の方を漢字で「杜鵑草」と書くことが多い。但し、「杜鵑花」と書くと「さつき」と読み、サツキツツジのことを示す。ああややこし。
因みに、「杜鵑草」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 目には紅葉花ほととぎす初秋刀魚 (原句一部修正)
② 杜鵑草待てば木陰に数多咲き
③ 一枝に鳴かず居並ぶ杜鵑草
①は、山口素堂が詠んだ有名句、「目には青葉山ほととぎす初鰹」を真似た戯れ句。時期の多少のずれはご容赦の程を。
②は、杜鵑草の花が咲いたかどうか見に行った時、数多く咲いているのを確認して詠んだ。「鳴かぬなら鳴くまで待とうほととぎす」(徳川家康)のパロディー。
③は、その花が1本の花茎に整然と並んで咲いている様子が印象的で、それをホトトギスが鳴きもせず並んでいるようだと詠んだもの。
杜鵑草は、ユリ科ホトトギス属の多年草。原産地は、日本、朝鮮半島、中国中部など。花期は9月~10月。花の色には、薄紫の他に濃紫、黄、オレンジ、青、白などが多彩。
「杜鵑草」を詠んだ句はままあり、本ブログでも何句か紹介したことがあるが、以下には、その中から比較的好むものを選んで再掲した。
【杜鵑草の参考句】
ゆく水に触れて色濃し杜鵑草 (山口いさを)
水に映りて斑をふやす杜鵑草 (檜紀代)
賑はひの日々は遥かに杜鵑草 (杉本由貴子)
杜鵑草揺らし嵯峨野をわたる風 (吉岡桂六)
杜鵑草人恋ふ色に咲きいでし (轡田幸子)